今回は「システム化」についてお話します。業務効率化を図る上で、システム化は非常に重要です。
「システム化って、ERPソフト導入したり、開発することだろう」と考える方が大勢いらっしゃるでしょう。私自身、昔はそう思っていました。しかし、それが「システム化」であるならば、間違いなくその「システム化」は失敗に終わります。
なぜでしょうか。そもそも「システム」とは日本語で「仕組み」や「制度」という意味であり、「システム化」とは「仕組みづくり」ということです。しかし、 前述の「システム化」は「ソフトの導入」にしかなっていません。これでは仕組みづくりの基盤を用意したに過ぎず、そればかりか既存の仕組みを変えないまま「ソフトの導入」を行えば社員に負担が増すだけです。これが失敗する理由です。
残念ながら、この失敗する「システム化」を未だに行っている企業が少なくありません。確かに広告や雑誌の記事には「○○システム導入で経費大幅削減」、「△△システムで営業力倍増」などと書かれており、そこには「システム」という名の「ソフト」の機能説明がずらずらと書かれています。しかし、その会社は仕組みづくりという「システム化」を行ったからこそ成功したのです。そのことは広告には書かれていません。(成功した会社の担当者の詳細な記事にはその泥臭いまでの努力が書かれていることが多いのですが。)
「システム化」で重要なことは、システム化の対象となる現状の業務フロー、役割分担、コストなどを明確にして、目標としている業務改善から生み出される新しいそれを決めることです。このあたりは、第71号「費用対効果のポイント」で話したので省略しますが、これができないのに、高価な「システム」という名のソフトを入れても、いい判断ができるはずはありません。
仕組みづくりができれば、ソフトを入れなくても業務改善が可能になる場合もあります。それは、仕組みを見直すときにムダ・ムリ・ムラを見つけ出してこれらをなくすことが改善に結びつくからです。実際にソフトを導入せずに組織を組み替えたり、権限委譲を行って業務改善が行われている例はあります。
しかしだからといって私は、ITソフトやハードとしての仕組みを入れる必要がないといっているのではありません。むしろ、仕組みづくりをきちんとすればす るほど、ITの有用性に気づき、自社のスケール、レベル(成熟度といっています)にあったものを導入できます。大まかな推定で入れたシステムより、何倍も 成果をあげるのはいうまでもありません。
「システム化」で注意すべきことは、ソフトだから・パソコン関係だからといって、情報システム部やITに詳しい人に任せないことです。仕組みづくりは、業務に詳しい人しかできません。つまり、「システム化」を行うには業務に詳しい人が中心となるべきで、ITに詳しい人がそれをフォローする体制作りが必要なのです。
中小企業において、「ITに詳しい人がいないからシステム化はできない」という方がいらっしゃいますが、それは業務を棚卸することができない(もしくは気 づいていない)からシステム化ができないのです。もちろん、ITを使えば、今までと全く違う業務手順を作り出すこともできます。そのためにどんなITがあ るか知っておくことは大切ですが、自社に導入する際は自社の業務がどうなっているかを見極めることからはじめる必要があるのです。
こういう話をすると「システム化」にしり込みする経営者の方も多いです。中小企業では、特に業務が属人化(特定の人しかできない)していて業務手順を「見 える化」することが非常に難しいからです。そのため、ソフトを入れることで業務手順を見えるものに変えるという逆説的な手段をとる場合もあります。ただ し、この場合
は経営陣がかなり強いリーダシップをとらないと、古い業務手順とのギャップに多くの社員が脱落し、大損害を出す可能性が高くなってしまいます。
いずれにしても「システム化」は時間のかかることです。性急な成果をもとめる方には我慢できないかもしれませんが、「急がば回れ」です。必ず後でよかったと思えますよ。