昔、「動かないコンピュータ」という言葉がはやりました。使えなくなったシステムや思ったより成果が上がらなかった仕組みのことをいいます。しかし、最初は動いていたのに「動かなくなった」ものもあります。どんなに立派なシステムを構築しても作り上げた瞬間から陳腐化が始まります。そのうち、あちらこちらでうまくいかないことが出て、やがて最初の盛り上がりがうそだったかのように使われないシステムになっていきます。これがシステムの寿命です。今回はこの寿命について少しお話します。
多くのかたはハードウェアであるパソコンや事務機器は寿命があることを当たり前だと思っています。しかし、なぜか、システムに寿命があることをあまり重要視していないようです。
一番わかりやすい例をあげるとソフトウェアが特定のハードウェアもしくは基本ソフトに依存している場合、そのハードウェアや基本ソフトが販売されなくなり、修理も出来ない場合、寿命がきたといいます。何回かお話したと思いますが、みなさんが一番よく使われている基本ソフトのウィンドウズは1995年にWindows95 が出るま
ではあまり使われていませんでした。そのため、この時期を境にシステム再構築が増えました。その後もWindows98,2000,XP,Vista,7と新しい基本ソフトが出るたびに動作確認を行い、必要であれば、再構築、もしくは一から作り直して使っていました。ハードウェアでもNEC9801シリーズが2003年に受注終了になると技術系ソフトが大きく変わったのを覚えています。事務系ソフトでも大型のホストコンピューターからワークステーション、パソコンへと変わるにつれてシステムの見直しを迫られ、開発費に苦心した経営者も多いのではないでしょうか。
ほかにも2000年問題に代表されるソフトウェアが管理できる時間の制約で寿命がくる場合もありました。ハードウェアの制限があったとはいえ、そこまで使うことを想定していなかったケースが少なくなかったのは一種の驚きでした。2000年がくることはずっと前からわかっていたのに近づいてから慌てていた人が多かったように感じたからです。話は変わりますが経理ソフトの場合だと消費税の改定など社会の変化による見直しというのも大きい要因となります。人事ソフトなら派遣社員を含めた社員構成の変化も影響が大きかったはずです。
このようにITシステムそのものが寿命がくるだけでなく、それを利用する仕組みそのものにも寿命が来ることを理解いただけたと思います。それにもかかわらず、寿命を意識した対応がなされていないITシステムや仕組みが多いです。最大の問題点は
仕組みづくりを見直す時期が決まっていない
ということです。開発期間は始まりはともかく終わりはきっちり決まっていることが多いのですが、使用期間というのは決まっていないことが多い。もちろん、システム開発会社のサポート期間の終わりという絶好の見直しタイミングもあるのですが、システムの中身や仕組みの見直しを行うことなく、なんとなく更新しているケースがほとんどです。
なんでもそうですが、始まりがあれば終わりがあるのです。システムを企業資産として有効活用するならば、消費期限を正しく設定し、改修か破棄かを決めるルールをシステムを運用する前に明示し、周知徹底することが重要なのです。そして、その際にシステムだけでなくその仕組みそのものがいいのかどうかも社会情勢や法律、IT(携帯や無線技術などの新技術)を踏まえて、見直すべきです。漠然と仕組みを最新のハードウェア、最新の基本ソフトに載せ替えるだけというのは資産の無駄遣いになる可能性が高いです。今ならばクラウド環境に代表される仮想ハードウェア上にシステムを移すこともできます。アウトソーシング・外注という仕組みそのものを外に出すという方法もあります。10年前5年前なら考えられなかったことが今は利用できることを忘れないでください。今使われているシステムの寿命を今一度考えてみてください。