消費税と建設業(その6)

 前回に引き続き、消費税増税対応についてお話をします。

 前回は、契約管理についてお話ししました。消費税に関しては契約が一番です。とはいえ、契約だけでいいわけではありません。引き続き、全体的に注意すべき事項についてお話しします。

(2) 工程管理・請負金管理

 さて、契約管理がきちんとできたとして、次のポイントは契約に関係することを守る管理です。まずは工程管理です。着工日と竣工日は直接契約に関係ないですが、竣工していないのに引き渡しができません。工期厳守は建設業界の基本ですが、消費税が関係してくるとより厳しく行う必要があります。以前にお話ししていますが、年度末引渡の場合は延期すると消費税が5%から8%に変わってしまいます。これは契約金額全体にかかわるので影響は小さくないのです。

 まず行うことは、実施工程表を引くことです。公共工事であれば発注者への提出用に全体工程表を作成すると思いますが、正直、契約工期をもとに割り付けた形式的なものが多いです。

 実施工程表は、実行予算をもとに協力業者や材料などの現状、現場の制約条件等をふまえながら、少しでも安くて安全で早くよりより品質の工事ができる工程で引いたものです。とはいえ、なかなか実施工程表をきちんと引けている担当者は少ないようです。

 消費税対応については会社全体で組織的に対応することを踏まえ工期厳守を前提に余裕のある工期設定を行えるようサポートする仕組みが必要です。特にいつもならお任せにしている担当者単位での実施工程表を幹部も目を通すことで甘い部分や危ない部分をあぶり出し、各工程修正を行うようにしましょう。余裕があるといっても気を抜かずに前倒しで工事を進めるように担当者に意識づけすることも重要です。

 また、実施工程表作成が不得手な若手にはベテランがついて支援を行い、工程表の作成方法をアドバイスできるようにするのも重要です。工事中の定期的な進捗管理も担当者任せにせずにできるだけ細目に進捗状況を報告できるような体制を構築しましょう。

 年度末は材料はもとより労働力も確保しにくくなります。事前予定をしっかり立てて、材料業者や協力業者との打合せをこまめに行い、準備不足で工程がずれないようにすることも忘れないでください。

 やむを得ず、工期延長による契約変更が行われた場合は速やかに消費税による収支の見直しも行えるようにできれば、延期による消費税UP時の影響をシュミレーションしておくと安心です。具体的には最悪、消費税の増額ナシで、協力業者への支払額が増えるような場合にどれくらいの利益率低下になるのかを計算しておくことです。もちろん、延期によって契約変更を行う際に影響を最小限に抑えることできる部分竣工(年度内と年度明けで契約を分けてもらう)についても発注者ときちんと打ち合わせしておきましょう。

 請負金額が変わる場合に影響する契約もあります。経過措置で契約した工事の契約で、その工事の増額分は消費税が8%になります。

 この増額は当初契約額より増えた分ですので、請負金の増額・減額管理を正確に行うことが重要になります。具体的には工事内容の中止や変更に伴う減額金額や増額金額をできるだけすばやく計算できるようにすることです。そのためには見積時に中止や変更の可能性がある工種に関しては詳細な見積を作成しておき、変更時に影響する金額を対象部分だけで計算できるように準備しておきましょう。

 当然、これらの請負金管理も担当者任せではだめです。定期的な工事会議を実施して、中止・変更の可能性をできるだけ早い段階から情報を収集し、発注者との打合せを円滑に行えるようにしましょう。竣工後精算時にいうのは手遅れだと思います。こちらもいつもより前倒しで管理してください。

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