消費税と建設業(その7)

 前回に引き続き、消費税増税対応についてお話をします。

 前回は、工程管理と請負金管理についてお話ししました。実施工程表がどれだけ精度高く引けるかが工期を守れるかに直結します。また、請負金増額を円滑に進めるためには着工時の検討がキーになります。これらをふまえて、引き続き、全体的に注意すべき事項についてお話しします。

(3) 支払管理・出来高管理

 請負金の増額は明らかな追加工事や変更工事であれば、比較的わかりやすいです。しかし、材料高や微妙な仕様変更などは費用に収まってしまうと判断しがちなため、つい見過ごしてしまい、請負金の増額検討を行わずに利益を圧迫する要因となります。

 また、元請・発注者との契約と同様に協力業者、材料業者との契約も支払額が増額することで消費税の変更対象になることを忘れてはいけません。

 そのために重要になるのが支払管理です。特に重要なポイントとなるのは外注への出来高管理です。

 まず最初に契約の段階で1式契約ではなく数量精算しているかどうかが重要です。1式の場合は大きな変更でない限り変更部分も含まれていると判断されることが多いですが、最近は厳しい価格で契約するために数量精算を望む協力業者も多くなっています。当初からの変更分をきちんとみてもらいたいということです。

 特に最近の労働者不足の影響でその傾向が強くなっています。その点をふまえて、数量管理をシビアに行うようにする必要があります。かりに数量の精査が行わなかったとすると思わぬ過払いが発生したり、不足を後で請求されたりすること発生します。通常なら大きな問題がなくても消費税移行措置時期には契約期間による消費税変更があるため、問題になる可能性が出てきます。

 もちろん、協力業者側の協力も不可欠です。契約内容を詳細に正確にもれなくダブりなくするとともに後から請求がないように、月ごとの出来高管理を正確に行ってもらう必要があります。出来高精査をきちんと行わずに協力業者にまかせっきりにしている現場も少なからずあると思いますが、この機会に担当者と協力業者が二人三脚で精査を行うような仕組みを構築することをおすすめします。

 そのためには月単位で出来高精査をまとめて行うことではなく、日々可能な限り精査できることを行っていくことが重要です。具体的には業者からの日報提出と内容の確認、できるだけ細かな部位単位での出来形検査、材料加工や段取り等現場で行われていない準備業務の内容把握と出来高への反映です。鉄筋加工や鉄骨製作などは工場内での工程がかなりあるためにその進捗状況も含めて、業務の情報交換を行えることが工程だけではなく出来高の精度にも貢献します。

 材料の購入・支払管理も重要です。年度末工事はもちろんですが年度を超える工事でもできるだけ年度内に購入することで消費税の支払いが少なくなるのはいうまでもありません。材料置き場に困る場合は先行支払によって取り置きが可能かどうかの相談も材料業者と行うことを検討しましょう。状況によっては協力業者の材料置場も検討してもらいましょう。具体的には材料業者から現場ではなく、協力業者の材料置場経由にすることで輸送費・手間賃と消費税分がどちらが得かを検討するということです。

 前述の鉄骨や鉄筋等も材料支払いだけ先行させることが有利になる場合もあります。材料支給の場合は早めに支給できるかどうかを検討してもらうこともいいと思います。

 とはいえ、先行導入は無駄な購入をしてしまうことも少なくありません。ロス率も考慮したうえで、無駄のない材料購入が行えるように設計図や仕様書をきちんと読んで、契約数量の精査を行うようにしてください。

 総じて、原価管理の管理精度をあげることが重要になりますが、消費税の変化時期が過ぎてもこの精度UPは利益改善に貢献するので無駄なことはありません。これを機会に出来高・支払の仕組みを見直してみましょう。

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