「見える化」の進め方

 以前、「見える化」自身は目的ではなく、手段であると述べました。そして、「見える化」を手段とする例として、6つの目的をあげました。

1.属人化の排除
2.ムリ・ムラ・ムダの排除(定量的な問題・課題)
3.定性的な問題・課題の認識
4.分業化・統合
5.IT活用への布石
6.情報共有

 今回は、これらの目的を達成するため、どのような流れで「見える化」を進めるかをお話しします。わかりやすいよう、属人化の排除を例に話していきますが、他項目においても大きな流れは同じですので、全体像を把握していただきたいと思います。

1.現状分析

 まず、今がどうであるかを調べます。最初に取り組むことなのですが、一番難しくもあります。

 というのは、属人化された業務では、手順どころかメモすらない場合がほとんどです。大半は担当者の頭の中にしかないといったところでしょう。これを表に出すわけですが、ただ漠然と「書いてください」では無理です。そこで、似たような業務の手順書を準備しておき、そこに違いを書き込んでもらうとよいでしょう。白紙から書き出すのではなく、書き出すきっかけとなるものを準備しておくのです。

 類似の手順書がない場合は、空白の枠に矢印がつながった手順書のひな形のようなものでも良いのです。そういったものが手元になければ、インターネットを検索したり、図書館で参考文献を探して来れば、同様なことを実現できます。また、マインドマップ手法など、アイデアを書き出す手法も有効です。この際も一からはじめるのではなく、手順、道具、材料(資料)など書き出すきっかけをあらかじめ準備しておきましょう。

 次に、一度書いたものを何人かの人に見てもらいます。できれば関係者が望ましいのですが、逆に、業務を知らない人に見てもらい、手順のつながり具合などをチェックしてもらってもいいでしょう。書き手がベテランであればあるほど、「こんなことは当たり前」「書かなくても見ればわかる」などと無意識のうちに判断し、書かないことがあります。準備的なもの・経験で判断しているものなどが、漏れていることがあります。ヒヤリング側も、口頭では、大切な手順を漏らしても気がつきにくいのです。第3者的な人が見るのは、とても重要です。その際、業務手順を見せるだけでなく、完成した帳票のサンプル・業務に使うべき資料も、準備して見てもらうようにしましょう。全体像がグッとつかみやすくなると同時に、不備も見つけやすくなります。

 そして、現状業務が抱える問題点を聞き出します。「見える化」が目的であれば、手順を書き出して、まとめれば終わりです。 しかし、本当の目的は「属人化の排除」でした。ということは、今まで、その人にしか業務ができなかった何らかの理由があるはずです。そこを明確にしないと、せっかくの「見える化」が新たな属人化を招くだけです。

 問題点の見つけ方としては、なぜこの業務が必要なのか、いつから始まったのかなど、その業務の歴史を紐解くと見つけやすいものです。担当者に昔話を聞きながら、業務の背景を「見える化」していくことが、問題点を見つけ出す重要なポイントとなります。

 気を付けたいのは、「属人化」自体を問題にしないことです。担当者の意思ではなく、やむを得ない場合も少なからずあります。そこを配慮して聞き出さないと、本当の問題点が見えなくなります。注意してください。実は複雑な商習慣があったり、特別な経験則を身につけけないとダメだったりということがあっても、担当者自身が無自覚であることが少なくありません。ベテランであればあるほどこの傾向は強いので、時間をかけて聞き出してください。

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