消費税と建設業(その9)

 前回に引き続き、消費税増税対応についてお話をします。

 前回は少し脱線して、取引に対する税金区分についてお話をしました。今回はそれを踏まえながら、組織的対応の面を取り上げていきます。

(4) 支援体制と教育

 現場での消費税増税対応として、下記の管理についてお話をしてきました。

 ・契約管理
 ・工程管理・請負金管理
 ・支払管理・出来高管理

 ベテランの工事管理者であればともかく、若手や変更管理が不得意な管理者は現場を見てるだけでいっぱいいっぱいということが少なくありません。また、会社自体に管理の仕組みができていない場合はそもそもそのベースとなる考えすら根付いていない可能性があります。

 しかし、消費税増税は会社の大小や管理のレベルにかかわらず、実施されます。できるだけ円滑に進めるには組織的な対応をすることが必要となります。

 具体的には、契約管理を中心に消費税関連を社内全体でみる担当者を決め、こまめに工事内容を確認し、工事担当者への声掛けや基本教育の実施を行います。もちろん、専任ではできないと思いますので経理担当や工事部長が顧問税理士のサポートの元対応することが現実的ではないでしょうか。

 契約管理については経理担当でも円滑に管理できるように契約書類全体ではなく、消費税増税に関する項目のみをチェックするような仕組みにしましょう。工事ごとの契約日、引渡日、担当者、税率等を契約書から抜出し、一覧表として管理することが望ましいです。また、各工事が以前お話ししたどのタイプの契約になるかを確認し、注意事項をまとめておきましょう。もちろん、これは自社が受注する工事一覧だけではなく、協力業者に発注する工事も同様の一覧表が必要なことを忘れないでください。

 また、年度内工事での工程管理や請負金・工期の変更管理は工事担当者しかできないことですが、工事部長がいつもよりこまめに声掛けをすることでできるだけ早く対応できるようにしましょう。週単位での工事会議がある場合は議題に必ず入れておき、確認する仕組みも大切です。

 一番大切なのは工事担当者の自覚と早い事前準備です。実施工程表をきちんとたて、進捗管理を行い、遅延が見受けられたら早めに手を打つ、遅延が避けられない場合は上職者に対応を協議し、必要に応じて発注者と打合せを行うことです。

 当たり前のようなことですが、現場で仕事に追われているとついつい後回しにしがちです。不手際による利益損失や発注者とのトラブル発生の可能性などを工事会議やミニ勉強会を通じて、常に教育していく必要があります。具体的な契約変更手続きや増税の概要も知ってもらうことは大切ですが、なかなか身につかないのが実情です。それよりは何か起きたら、会社全体で解決するので声をどんどん出してほしいといった形のほうが現実的だと思います。そのあたりを会議や勉強会で繰り返し伝えてください。

 これを機に管理体制を見直すこともいいですが、見直しに時間をかけることができません。工事規模にもよりけりですが、中小建設業であれば、年度の前半で多くの対象工事は竣工するはずです。消費税対応もそこで一区切りとなり、あとは8%と数字は変わったとしても従来通りの対応で問題ありません。とりあえずは応急処置的な対応をして、対象工事を円滑に竣工させ、次の10%の経過措置までに管理体制を見直せばいいです。そのためにも組織的に対応しながら自社の問題点を見極めておくことは有用だと思います。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする