現場管理のレベルアップ(その3)

 前回に引き続き、現場管理のレベルアップを各管理項目ごとにお話しします。

 前回はQ(Quality:品質管理)のレベルと向上方法をお話ししました。今回はC(Cost:原価管理)の話をします。

 原価管理に関する相談は昨今の建設業界の厳しい環境からとても多いです。どんぶり勘定からの脱出というのが経営陣の共通の想いです。しかし、自社がどのレベルにいて次のレベルにあがるにはどうすればよいかということは把握できていません。

レベル0:管理なし
 品質管理に比べるとこのレベルの企業は少なくありません。工期守って、品質ほどほどで無事故であれば結果は自ずとついてくるといった感じで現場単位での利益どころか全体の利益すら1年後の財務諸表でしか見ることができない状態です。

 この段階では、工事一覧表を作成し、工事ごとの請負金と工事原価、そして、工事利益をまとめることです。この結果、工事利益が自社ではどの分野のどの程度の規模の工事で出るのか、得意分野、不得意分野が見えてくるようになります。現場単位で行う以上、工事原価の共通原価をどう分配するかがこの利益管理のポイントになりますが、あえて共通原価を工事ごとに分配しないことで作業負担を減らし、全体像をできるだけ早く精度よく把握することができます。小さい工事のほうが経費が掛かる等の意見もありますが細部にこだわり手間ばかりかけるよりまずは全体的な傾向を把握するようにしましょう。

レベル1:場当たり的な管理
 工事ごとの原価が見える状態ですが、使った記録が見えているだけで予測が全くない状態です。原価もなんとか総額ではなく、費目別(材料費、労務費、外注費、経費)といった分類でわかるのようになり始めたレベルです。費目別把握はレベル1.5といった感じでしょうか。

 これを次のレベルにするにはもちろん、予測をすることです。具体的には実行予算の作成とそれに伴う目標利益の設定です。請負金額と実行予算の差が目標利益です。企業によっては一定の目標利益率ですませているところもありますが、これでは実行予算を達成しようという気力が現場で生まれません。目標利益がたとえ赤字でもこの金額であればこの工事は達成できるという実行予算をつくる仕組みづくりが大切です。利益ありきではなく、予算ありきの姿勢を示すことです。一朝一夕でできるものではありませんが見積書・積算書から費目レベルで展開すれば大きなずれもないはずです。

 これができれば、予実管理(予算と実績の差を確認、分析する)ことが可能になります。予算の精度向上や請負金額の見直しにも貢献できるようになります。

レベル2:手順がとりあえずある管理
 実行予算を作ったり、予実管理をするためにはある程度の基準と手順、管理帳票が必要になります。このレベルではそれらが一通り揃っている段階ということです。工事別原価管理の第一目標がこのレベルになります。もちろん、このレベルでは事後処理、工事終了後の判定しかできない状態です。

 次のレベルに上がるには、施工中つまり月単位での予実管理を実施できるようにする必要があります。そのためには現場のどこまでが完成したかを判断する出来形管理、それを金額に換算する出来高管理を行える体制を構築しなくてはいけません。最初は支払実績を月単位でまとめる、レベル2.5ぐらいを目指してからその支払が現場の進捗内容に見合っているかどうかを判断評価するレベルにあがっていくという段階を踏みます。

レベル3:標準化された管理
 このレベルでは、出来高管理も行えるようになり、施工途中で予算の不足具合がおおよそ見えてくるようになります。現場単位での予算策定、出来高評価、実績入力もルールに基づいて行われており少し未来が予測できるような段階になっています。

 この予測精度、つまり最終利益の精度をあげる業務が次のレベルにあがるために必要になります。それが未払管理です。これは現場で残っている工事内容から必要な予算を施工途中で改めて算定しなおすことで支払実績+未払予測=修正実行予算を計算し、最終利益=請負金額-修正実行予算で利益の修正を行うようにします。利益が低下するならば、追加請求や予算の縮小等も検討するようにして継続的な原価改善ができるようにします。

レベル4:継続的な改善のある管理
 未払管理もでき、工期半ばで精度の高い最終利益がみえるようになる段階です。もちろん、出てきた結果を結果として終わらせるのではなく、類似工事の見積のもととなる歩掛資料への展開や原価改善事例のまとめと関係者への共有といったことが行われ、工事担当者によらず、ある程度の原価管理レベルが維持できている状態です。

 現実的にはこのレベルに達するのはなかなか大変ですが、品質に比べると達成しやすいです。自社のレベルを見つめ直し次のステップへの準備をしましょう。

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