原価管理(その8)

 前回まで原価管理のポイントについて、実行予算から竣工時の予実照査までお話をしてきました。広い意味でのIT(情報技術)であれば、これでいいのですが、せっかくですのでもう少し狭義のITとの関係をお話しします。

7.原価管理とIT

 今までお話しした原価管理を有効にかつ負担少なくすすめるためにはIT活用は不可欠です。今までの話を踏まえながら、IT活用を紹介していきます。

(1) インフラ整備

 現場単位での個別原価管理にITを活用するにはインフラの整備が必須です。最低でも現場単位、理想は監督単位でのパソコン保有といつでもインターネットに接続できるネットワーク環境の構築を行いましょう。パソコンは現場では急な停電にも耐えれるようバッテリーが搭載されており、盗難防止のために終業後は持ち運びのできるノートパソコンが最適です。

 ネットワークは最近の無線LAN環境と定額のモバイル高速接続を組み合わせるのがベストです。以前のようにADSLなどの固定回線を設定することなく安定高速なネットワーク環境を構築できるようになりました。モバイル接続なら現場のみならずいつでもどこでも業務を行えることができます。ここ数年でこれらの環境は劇的に変わってきたといえるでしょう。

 また、書類やデータを共有できる仕組みを不可欠です。オンラインストレージサービスやNASのWeb共有機能などを活用すると安価で容量のある共有フォルダを簡単に構築できます。

(2) ソフト導入・活用

 実行予算や出来高管理、予実調査などできれば専用ソフトを使った管理が望ましいです。しかし、最初からソフトを導入しても操作の習得でうまくいかないことがあります。そこで、比較的簡単な仕組みをエクセルで構築することをおすすめします。具体的には実行予算や出来高管理などはあらかじめテンプレート(ひな形)を作っておき、主要工種を選んで数量と単価を入力していくだけの仕組みを作っておいたり、参考となる資料(契約書類のひな型や調達ルール、過去の歩掛データ)を共有フォルダで配布するといった仕組みを構築します。

 仕組みを凝りすぎて、マクロを駆使するまではおすすめしませんが計算が簡単にできるように関数を埋め込んでおいたり、印刷設定などを事前にすませておいてあげるなどの工夫は必要です。条件付き書式やオートフィルタなどもうれしい配慮になると思います。

(3) Webサービス

 リマインダーメール機能などがあるWebカレンダーを利用して提出期限や各種お知らせを流す仕組みなども活用すると便利です。特に請求書や領収書など期日に遅れると困るものはリマインダーなどで自動的なフォローができる仕組みは有効だと思います。

 前述したオンラインサービスは共有機能としてだけでなく、ファイルのバックアップとしての機能にも使えます。現場でのパソコンはほこりや湿気など厳しい環境で使われますのでバックアップができていることは非常に心強いのではないでしょうか。

 また、最近のビデオ配信サービスを活用して、eラーニングを行うのも難しくなくなってきました。画面操作を記録し、そこに音声を載せたり、現場の施工を撮影し、施工の留意点をスライドで挿入するのもフリーソフトでできるようになりました。動画作成はそれなりにパソコン性能を必要としますが、再生側はそんなにはいらない環境が整ってきています。

 いずれにしても、小さく初めて大きく育てるといった発想で無料や安価な仕組みから初めて、社内に原価管理に対する意識を芽生えさせてから本格的なシステム作りをすることをおすすめします。

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