原価管理(その4)

 前回は、調達までお話をしました。手配の種類ごとでの注意事項と共通となる取引ルールをまとめることの重要性を理解していただけたと思います。これで、工事を実行するための準備は完了です。これからはいよいよ、施工時における管理をお話しします。

3.施工管理(出来高管理)

 調達でほぼ基本的な工事の価格は決まりました。とはいえ、すべてが決まっているわけではありません。現場は生き物です。契約内容通り、進むほうが少ないかもしれません。そのために細やかな管理が必要となります。いくつかのポイントをお話しします。

(1)臨時支払

 最初の請負契約で工事全体金額の6割から7割が確定します。しかし、残り3割は内容的に工事が進まないと見えてこなかったり、規模が小さかったりと請負契約にしにくいものがあります。それらはその都度契約を行ない、支払う必要があります。電気代や事務用品費などの現場管理費と運搬費や安全対策費等の共通仮設費は規模にもよりけりですが、都度契約する傾向が大きいです。

 これらの支払いは一定の予算を組んでおくだけでなく、支払いごとに予算(計画金額)と実算(支払金額)のチェック、いわゆる予実管理をしないとついオーバーになりがちです。結果的に当初の利益目標に達成しない一番の原因になります。「ちりも積もれば山」です。しっかり月々の確認をしましょう。

(2)契約分の出来高管理

 契約したらあとは順番にそこから支払えばいいのですが、支払いチェックを怠ると増精算、いわゆる契約以上の支払いで精算しなければならないことが多くあります。たとえば、鉄筋の契約t数は設計数量です。しかし、実際には段取り筋と呼ばれる、高さや幅調整の鉄筋が必要だったり、鉄筋の割り付けの関係上(鉄筋は500mmピッチのオーダーになるので、400mmの場合、100mmあまるが仕方なく手配することになる)、設計数量以上の鉄筋が必要になります。

 契約の仕方によりけりですが、これらは単価を少し高めにすることで設計数量で契約し、段取り筋などを含んだ形での単価とすることがあります。その場合は設計数量をもとに設計した個所の鉄筋量で出来高管理を行わなければならないのが、担当者が知らずに実数実測のもと、使用した鉄筋量で支払いをおこしてしまうと過払いになるのです。

 このような基本的なルールを確認し、業者からの支払いを確実に管理するのが出来高管理です。業者も契約者と実施者が必ずしもいっしょではないためよく支払トラブルの原因になります。最初の支払い時にルールの確認をすることが最大のポイントです。

 月単位で支払うことになるのですが、そのために重要なのが日々の日報。結局、出来高管理は月で支払うといっても日々管理が必要だということです。

(3)追加予算請求の準備

 施工中のもう一つの大事な管理として、追加工事の予算請求があります。当初の施工条件と異なっていたり、工期が諸事情で延期されたりと契約時と違う条件での施工を行わざる得ないことは少なくありません。また、掘削時に大きな転石が見つかり、破砕するとか、地下水位が高くて、予定なかったポンプ排水など追加工事の要素も出てきます。

 これらを工事が発生する前にできるだけ予測するとともに、出てきたら段取り優先で工事するのではなく、必ず発注者、施主に想定異なる内容であることを承諾してもらってから工事を進めましょう。そして、想定が異なることで予算請求をすべき要素があるのであれば必ず概算見積を提示しておくことがポイントです。

 想定以上に楽にできたところがあるかもしれません。だからといって請求しないというのは営利企業としてはいいとは言い難いです。発注者の予算執行状態や施主の懐具合を探りながら、適切な追加請求を行えるように準備をしましょう。

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