前回は原価の分類について、いくつかの視点でお話をしました。今回は、実際原価の計算について個々の費目ごとに説明していきます。
4.実際原価の計算方法
(1) 材料費
原価の代表格は材料費です。通常であれば、この計算が原価管理の要といっても過言でないと思います。
基本的には仕入れたものを記録し、使った分を記録しと随時記録していく継続記録法が望ましいです。しかし、測定しやすいものや単位が大きく明確なものであれば、継続記録法で行えるのですが、測定しにくかったり、単位が小さく記録するのが困難な場合は継続記録法を適用できない場合があります。
そのために行う手法が棚卸計算法です。棚卸計算法はある一定の期間の期首と期末に数量を測定し、その差を使用量として計算するものです。一見簡単で正確なように見えますが、期間中に単価変化があるような材料についてはどの価格の材料を使ったかが不明瞭になるという欠点があります。つまり、数量として明確に計測できても金額に換算する際に支障が生じるということです。このあたりは原価管理としては、材料を数量ではなく、必ず金額で管理するという視点を忘れないでください。
そのため、材料費の計算方法として何らかの推定をして計算をする必要があります。具体的には下記のような手法があります。
・先入先出法
先に取得した材料を先に使用するという考えで使用材料費や在庫材料費を計算する方法です。一番よく使われている方法です。
・後入先出法
後から取得した材料を先に使用するという考えで使用材料費や在庫材料費を計算する方法です。企業会計原則では使用しないとなっていますが、社内管理として選択する場合には問題ありません。
・総平均法
期間中の仕入分はそれぞれに均等に使われたという考え方で、元の在庫分と仕入分をすべて平均した単価で使用材料費や在庫材料費を計算する方法です。
・移動平均法
期間中の途中(たとえば前期と後期)で使用量がわかっているときにそれぞれの期に存在した材料による平均単価を出して使用材料費や在庫材料費を計算する方法です。途中使用量がわからない場合は総平均法と同じですが、途中使用量がわかった場合は計算結果は異なることになります。
・個別法
材料個々の単価で計算する方法です。材料が明確に区別でき、単価を割り当てることが可能な場合に使用します。
・最終仕入原価法
最後に仕入れた材料単価で計算する方法です。企業会計原則としては使用しないとなっていますが、税法上は適用を認められています。中小企業では計算が簡易になるため採用されているケースが多いようです。
重要なのは、個々の計算手法を一度決定したら原則として変更しないということです。特に財務・税務的な点からいうとどの手法で計算するかを税務署に届ける必要があるため、選択には十分検討して行う必要があります。
一番楽なのは最終仕入原価法だと思いますが、できれば先入先出法で計算できることが望ましいです。