原価管理の基本(その6)

 前回に引き続き、実際原価の計算について個々の費目ごとに説明していきます。

4.実際原価の計算方法

(3) 経費

 経費はその捉え方で範囲が大きく変わります。一般的には実際原価を出すための経費は工場経費や現場経費と呼ばれているもので、製造や建設に直結しているものです。これ以外に共通経費・共通費と呼ばれている販売費・一般管理費(建設業では共通仮設費、現場管理費、一般管理費等)とは分けて考えます。

 しかし、会社として、共通経費や共通費の一部を現場経費の中に含む場合もあります。このあたりは本社や支店といった支援部隊の現場への関与度で変わってきます。まずは、自社としてどこまでを原価の中に反映するべきかをきちんと定義することが重要です。

 経費は製造と直結している直接経費(外注加工費等)と間接的に関わっている間接経費(電気代等)に分けて算定します。特に間接経費の中には設備の減価償却費のように支払いの実態はないが、経費として考慮すべきものを含まれるので注意が必要です。

 上記とは別に経費は算定方法によって、4つの分類があります。

■支払経費・・・実際の支払や請求書によって消費高を算定するもので、各月の支払高に前払、未払いを加減して消費高を算定します。(例:外注加工費、修繕費、保管料)

■月割経費・・・1年または数カ月の支払高を月割りにして消費高を算定します。(例:賃貸料、減価償却費、保険料)

■測定経費・・・メーターなどで測定した使用量を元に消費高を算定します。(例:電力料、ガス料、水道料)

■発生経費・・・実際に生産活動から発生する費用のうち、実質的な金銭の支払を伴わないもの(例:棚卸減耗費・・・紛失・盗難などによってなくなった製品等の減少金額)

 上記の中で測定経費は一定期間(通常、月単位)での合計使用量をもとに支払金額が決まりますが、集計月は支払月とは異なっているので、対応する月の原価に対応させることを忘れないようにしましょう。

 そのため、実際原価を出すために経費を実際の支払金額を把握しようとすると通常は1か月近く遅れることになります。そこで、原価を早めに把握したい場合は支払金額ではなく、使用量を把握し、そこから支払金額を推定することが必要になります。

 また、発生経費は月単位で管理できることが望ましいですが、棚卸時期が年に1回などの場合は、月割経費といった形になることも覚えておきましょう。

 原価に反映する際に直接経費は容易に製品や工種との関連付けを行いやすいですが、間接経費はそれが難しいです。そのため、分配方法をどうするかが重要な問題になります。

 通常は、重量や数量など金額を比例配分しやすい指標を決め、各製品や工事別に分配することが多いです。直接工事費や直接材料費といった金額ベースでの分配もあります。

 測定経費は通常メーターを使って使用量を測定します。なので、できるだけ分配精度をあげようとするならば、最初からメーターを複数設置する方法もあります。もちろん、手間や費用は余分にかかりますので、精度向上とのバランスを考え設置してください。

 実際原価を算定する際に重要なのは経費項目の分類ではなく、上記に示したようにどの費用がどの製品や工事に該当するかをきちんとルール化しておくことだということを忘れないでください。

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