前回は、施工時における出来高管理のお話をしました。臨時支払と契約支払の月度管理と追加予算獲得の準備について話をしました。今回も引き続き、施工時における管理をお話しします。今回のテーマは、原価改善です。
4.単価管理(原価改善)
契約支払も臨時支払も一度支払ってしまうとついついその単価の照査をせずに数量管理になりがちです。工事期間が数か月程度であれば、そう問題はないかもしれませんが、1年間以上にわたる場合は思わぬ問題が起きることがあります。
よくある話としては、鉄筋やコンクリートなどの材料費の変化です。特に一時期鉄筋は大きな価格変動を起こしていました。そのため契約タイミングによっては、予算を大幅に上回る価格でしか契約できない現場も多数あったようです。
今回の震災のように予期できない変動要因もありますが、多くはある程度傾向を予測できます。では、どのようなところから情報を入手して予測したらいいでしょうか。
ひとつは、ご存知物価版です。正確には「建設物価」と呼ばれている毎月発行の工事に関する価格の本です。年間で37200円と少し高いですが、会社に1冊は用意することをおすすめします。毎回価格動向が掲載されていますので、それをみて、上昇傾向なのか下降傾向なのか見ることが大切です。もう一つは商社もしくは商社機能を持ったメーカーです。鉄筋にしてもコンクリートにしてもその原材料の価格変動が時間をずらして、商品の価格変動になることが一般的です。そのため、それら材料を扱っている商社やメーカーに原材料の動向を聞くことで価格動向を推察することができます。
動向がわかったら次は対応です。上昇傾向と下降傾向で対応が変わります。価格が上昇傾向であれば、早めに安い単価で全体数量で契約します。契約は多くの場合、固定単価で契約しますので、市場が変わっても安い価格のままで支払いを起こすことができます。一方、価格が下降傾向にあれば、こまめに必要数量を契約します。こうすることで、最初に一括契約するより、安い価格で支払いすることができます。
いずれにしても、大切なのは、的確な材料使用量を把握しておくということです。いつごろ、どの程度の量の材料を使うかが把握できていないと適切な価格で契約することができません。もちろん、細やかな工程表を立てるだけではだめです。入荷までの時間やロット単位での生産ピッチなども考慮に入れて、注文までのタイムリミットをしっかり把握しておかなくてはいけません。このような配慮を忘れていると適正な価格どころか材料入荷にも支障をきたすことになるので注意してください。
単価管理でもう一つ大事なのは、施工方法の見直しです。計画では気づかなかった方法や施工順序も現場が進むにつれて見えてくることがあります。天候や周辺環境の変化の影響もあります。これらを注意深く観察し、当初計画との仮説の違いをきちんと見極めて、仕事が効率よく進む手段を見つけたら、すばやく変更を検討し、協力業者と協議して計画の見直しを行うのです。
意識して毎日現場を見ていないとできないことですし、経験がものをいう場合が多いです。そのため、若手の方はついついあきらめがちですが、それは自分だけで考えているからです。自分では考え付かなくても専門業者の方々が気づくことは少なくないのです。大切なのはこのような方々に耳を傾けることです。特に支払いの立場から「上から目線」的な言動をする監督がいますが絶対にだめです。専門業者の知恵を決してをおろそかにしないようにしましょう。そのためには日々の接し方から気を付けることを忘れないようにしましょう。
また、一つの専門業者から得られた情報だけでは変わらなかったことが複数の業者の情報を統合することで大きな変化を見つけ出すこともあります。現場監督ならではの知見の得方が原価改善を可能にするのです。
なかなか難しいと思いますが、常に意識して現場を見続けることが原価改善の第1歩です。忘れないでください。