前回は、個別原価管理のお話をしました。施工計画を立て、個々の工事ごとに原価を管理することで、自社の得手不得手を見極め、利益を確保できる工事をできるだけ多く受注する仕組みづくりが重要だということでした。
今回は実行予算の話をします。実行予算とは「第2の施工計画」と呼ばれるように、工事における細やかな内容を決めなければ策定できないものです。施工計画では、「土工事」という表現で書かれていたものを実行予算ではどの程度までは機械で行い、どこから人力なのかをある程度こまめに想定しなければ、予算ができません。
そして、実行予算はPDCAサイクルのPに相当する一番最初に策定すべきものです。よく原価管理を出費管理と勘違いしている方がいらっしゃるようですが、原価管理は予算ありきで行わなければ本当の価値を発揮できません。確かに出費管理をすれば、使った額は正確にわかります。しかし、制約のかからない出費は必ずといっていいほど大きくなる傾向にあります。実行予算を立て、出費に制約をかけなくては、もうけを出すことは容易ではない時代になっていることをもっと自覚しなければいけません。
では、実行予算を作るためにはどのようなことをすべきでしょう
か。
まずは工程表をしっかり描けるようになることが実行予算をきちんと組むための第一歩だと思います。
天候や施工能力、地形や材料搬入路など様々な要件の中で工程表を組んでいく必要があります。毎日天気で、機械も順調、人も元気で効率よくなんてのは現実的ではありません。昨年の天気予報を調べ、機械の調子を確認し、社員や協力業者の体調をきちんと押さえる必要があります。
私自身も天候や機械の不調に何度も悩まされました。期日を守るために余計な出費をしたことも少なくありません。でも、いろいろな予想をして対策を立てておいた工程であればあるほど、なぜか進捗がスムーズに進んでいった気がします。つまりどれだけあやふやさをなくせるかというのがひとつのポイントなのだと思います。
しかし、若年者にはここまでのことをすることは大変難しいですよね。では、若年者は実行予算を組めないのでしょうか。いえ、そうではありません。経験者の実行予算を他の実行予算に展開できる仕組みを作ればいいのです。
ここで二つ目のポイントになるのが歩掛(ぶがかり)です。ご存知のように歩掛はある一定の工事に要する作業手間ならびに作業日数を数値化したもののことです。世の中標準はありますが、実際には会社独自のものが必要になる場合がほとんどです。
ある程度分解された作業手順はどの会社も比較的変わりませんが歩掛は結構な幅があることを経験的に学んできました。同じ土工事をお願いするのでもA社は機械施工が得手で、B社は人力施工が得手だと、その両方を行う工事の場合、比率や順序によって2社の歩掛に差が出てきます。歩掛は、工事内容だけでなく、周辺環境や施工場所も影響を及ぼす場合はあります。とはいえ、ある程度は見切りをつけて行わなければ、条件が細かすぎる歩掛の使いにくいのも事実です。それなりの割り切りが必要だということも忘れないでください。
工程表を上手に立てること、歩掛を取ることは大事だと認識しても、前回お話ししたようにひとりではだめです。会社全体で歩掛をとる仕組みづくりを行いながら、無駄の少ないかつ現実的な予算設定・工程表計画ができる元データを集めることが大切になります。
大きな会社でもいっしょです。技術革新が進む限り、歩掛を取らなくていい時代はきません。地道な歩掛調査、社内展開が明日の利益を確保することになるのです。