現場でのタブレット端末活用(その4)

 前回に続き、現場でのタブレット端末活用についてお話しします。今回はタブレット端末を拡張するための環境づくりについてです。

 タブレット端末を現場で使うために最初に整備すべき環境は通信環境です。特に現場ではセキュリティや設定の容易さから有線LANによるPC環境が主流であり、無線での通信環境が整備されていません。タブレット端末は無線での通信環境があって初めて意味をなします。ただし、使用する箇所や頻度によってどのような無線環境を構築すべきは異なります。

 「単純にタブレットに通信環境を内蔵したものを使えばいい」と思われる方も多いと思いますが、せっかく低コストで導入できるタブレット端末も月々の通信費用がかさむとトータル的な費用はかなりの額になります。できるだけ低コストで環境構築をするにはどうすればいいかをお話しします。なお、タブレット端末のWiFiによる通信は基本的にできるものとして、インターネットへの接続環境ということで話を進めます。

(1) 無線LANによる通信環境

 受入教育の際の動画説明資料の活用や現場でのコンクリート品質管理や鉄筋検査等施工記録への活用が主体の場合、データの送受信はそう多くはありません。このような場合は、現場事務所に無線LAN環境を構築して、必要な情報を送受信したのち、現場詰所や品質管理の対象現場に移動することで問題ありません。

 一番のメリットは初期コストとして無線LAN親機を購入すればランニングコストはほぼ0円だということです。また、通信速度が速く、通信容量の制限もないので、動画やCADデータなどの大きなデータを送受信も容易にできます。

 デメリットは現場まで届くような無線LAN環境を整備しようとするとそれなりにコストがかかるということです。トンネル現場のような計測関連に有線LAN環境を構築している場合は、そこから無線LAN基地局をいくつか儲けることで現場を網羅することも不可能ではないですが、造成工事のような場合は網羅することは現実的ではありません。

(2) WiMAXによる通信環境(モバイルルーター)

 現場で事務所の資料を閲覧したい場合やコンクリートの打設状況を随時、本社の技術部等に情報提供したい場合などは外で通信環境を構築することが必要です。

 このような場合、モバイルルーターによるWiMAXでの通信環境を構築します。メリットとして、通信容量の制限がないのと比較的高速な通信速度を提供できるということです。また、モバイルルーターの付近であれば複数台のタブレットが同時に通信することが可能になるということです。

 デメリットとして、通信エリア内でない山奥の現場などでは環境を構築できないのとモバイルルーターのバッテリーによっては長時間の通信ができないことがあります。バッテリーについては小型のモバイルバッテリーが多く販売されているので購入しておくと安心です。

(3) LTE、3Gによる通信環境(モバイルルーター、テザリング)

 WiMAXの環境を構築できない場合はLTEや3Gによる通信環境の構築を行うことになります。

 (2) と同様、モバイルルーターによる構築もありますが、アンドロイド携帯やiPhoneを使ったテザリングによる通信環境の構築でもOKです。メリットとしてはかなり広範囲で通信環境を提供できることとテザリングであれば、社員が最近のスマートフォンを所有している場合、通信環境用機器の準備が不要になるということです。

 デメリットして、通信速度が遅くなる場合があるのと通信容量に制限があるため、あまり多くのデータ量を送受信できないことです。また、スマートフォンが社員の個人所有だった場合、その通信費の負担をどうすべきかが問題になります。

(4) 内蔵による通信環境

 現場でのタブレット端末が1台しかなく、かつ、テザリングなどの準備ができない場合は内蔵型を選択することも検討する価値はあります。

 メリットはもちろん他の準備が全く不要な点です。デメリットはランニングコストがそれなりにかかることと高速通信のサービスが新しく始まっても乗り換えることができないことです。その点では内蔵による通信環境構築はできれば最後の手段にしたほうが望ましいと思います。

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