引き続き、財務管理についてお話しします。今回はリスク管理についてお話しします。
建設業の財務に関するリスク管理は、大きく2つあります。一つは一般的な請求・支払のリスクです。もう一つは現場トラブルによる予算超過リスクです。
最初のリスクのうち、請求リスクつまり、発注者が倒産した結果、請求してもお金がもらえない可能性というのは建設業に限らず、どのような業種にもあると思います。
着手金を渋るとか請求しても支払が遅いとか現金ではなく手形でしかも支払期日が長くなってきたというと危険信号です。長い付き合いがある取引先だとついつい了承しがちですが、相手の財務状況をよく観察(給与が下がったと担当者が愚痴っているとか相手先事務所に行くといつも資金繰りの話をしている等)し、危ないと判断する場合は少しずつ受注を減らし、他の取引先で売上をカバーするような方策を考えていく必要があります。
貸倒引当金を計上するなど税務の専門家との調整はもちろんですが、根本的に取引状況(請求入金の期間、金額の支払状況)をある程度まとめて把握しておく仕組みを作っておくことが大切です。また、初めての発注者であれば、着手金も含めてある程度手堅い契約をお願いすることを意識しましょう。
支払リスクは協力業者いわゆる下請業者へのリスクです。こちらは建設業ならではの重層下請構造がリスクをさらに高めます。
特定建設業者(4,000万円(建築工事業の場合は6,000万円)以上となる下請契約を締結する元請業者)の場合、建設業法第41条により、労働者への賃金が滞っている場合、その立替払いを許可した大臣もしくは知事が勧告できるというものがあります。
具体的には下請が倒産し、孫請がお金をもらっていなかった場合、下請に支払っていたとしても孫請に支払う、いわゆる二重払いになる可能性があるということです。
勧告と書かれていますが、対応が不十分だと特定を取り消すとの話もあり、事実上支払いをせざるえない状況になっています。
もちろん、一般建設業ではこの限りではないのですが、そもそも倒産してしまう下請業者を抱えていること自体がいい状況ではありません。倒産してしまう前に職人さんへの給料の不払いや遅延による職人さんのやる気低下や作業員が予定より少ないことによる品質・安全・工程での問題などが先に起きていることがほとんどです。
現場に来ている職長さん、職人さんとの対話から危険信号は読み取れると思います。こちらも同じように定期的に現場監督を通じて把握する仕組みを作っていきましょう。
もう一つの現場トラブルによる予算超過リスクとは、天候不順や近隣住民との約束事による制約、現場担当者の実力・経験不足や新工種での思わぬ出費といったものです。
できれば実行予算に織り込むことができればいいのですが、現実はなかなか難しいです。とはいえ、リスクを無視するといつも目標利益を達成できないという悲劇が待っています。
ある程度は危険予知として予備費を見ておくことが大事です。ただし、単に余分な出費があるだろうということではなく、出費の可能性の分、利益が確保できそうなところはしっかり確保するということを会社全体で考えるということです。
毎年、問題なく利益を上げている工種の工事では毎年少しずつ利益向上を目指し、設計変更や追加工事は確実に確保し、もしもに備えるということです。その際にもしもの金額もある程度算定しておくことで追加利益の確保にもめどをつけやすいので上記の危険予知の予備費も工事ごとに算定することをお勧めします。もちろん、予備費を算定するのは梅雨や台風シーズンの工事や不慣れな担当が受け持つ工事、会社として新工種のものといった限定的なものです。
リスク管理は品質・安全だけでなく、財務にもあることを意識してください。