財務管理(その9)

引き続き、財務管理についてお話しします。今回は目標利益管理についてお話しします。

今までの財務管理の中でも利益を意識すべきことは何回かお話ししてあります。原価管理でもそうですし、資金繰り管理、損益分岐点管理でもでもそうですが、では、利益をどう考えるか、そして、最終的にいくらの当期純利益を残すべきなのかというのが今回の話です。

建設業は以前もお話ししたように完成工事高に重きを置きがちです。結果として赤字工事を受注してもしょうがないという意識の人が少なくありません。

例えば、5億の工事で1%の利益率と5千万の工事で12%の利益率であれば、多くの建設会社は5億をとる可能性が高いです。実績や工事の入札ランク等を考えるとやむを得ない場合もありますが、債務超過や資金繰りが厳しい企業はその考えではだめだと思います。

5億の工事は1%なので500万円の利益、5千万の工事は12%なので600万の利益というだけでなく、たぶん、難易度や手間も5千万の工事のほうが低く、工期も短い可能性が高いです。1人の現場監督をつけ、あとは外注業者で固めるのであれば、費用対効果は確実に5千万の工事にあがります。

利益を中心に工事を考えると、今までの受注と違った視点が見えてくるはずです。公共工事と民間工事の比率、大規模工事と小規模工事の比率も利益額で考えると今までと真逆の方針になる場合も少なくありません。

利益を管理するためにはまず利益を意識するところから始めることを忘れないでください。

では、最終的な目標利益はいくらかということですが、まずは、販管費+支払利息+借入金の元金返済分が最低ライン、次が将来の投資(設備・機械だけでなく社員含む)標準ライン、さらにもしもの予備費も含めることができればいいです。

ただし、注意してほしいことは、借入金の元金返済分以降の利益目標はは税金を払った後です。つまり、最低ラインでも税金を考慮していないと借入金の元金返済ができないといったことになります。

あと、よく打ち出の小槌とされる減価償却費は実際に支払いがあるわけではないので、これを除くこともできないことはありません。しかし、古い重機や社屋をもっている企業だと減価償却費は大きくなくあまり期待できないことがあるので、考慮しないことが多いです。つまり、

当期純利益=元金返済分+将来投資+予備費

もしくは、特別収支がないものとして

経常利益=税金+元金返済分+将来投資+予備費

を目標利益として考える必要があります。

なお、借入金の元金返済分も以前お話ししたように借入金依存率【(長期借入金+短期借入金)÷総資産】が高い場合は前倒しで返済するぐらいの計画が必要です。

このような借入金返済を考慮した目標利益を算定するには複数年間の計画が不可欠となります。依存率が高い場合だと10年15年になるケースも少なくありません。健全な財務状況にまでもっていくことが最終目標として、年度単位の目標利益を算定しましょう。

あとはこの目標利益に工事での実行予算外費用、つまり、社内共通費を加えたものを工事担当者全体の工事利益の目標にします。

そして、利益率と利益額をセットにして、全体工事管理表で目標工事利益を管理します。具体的には今年度はあといくら利益額が必要で逆算するといくらの利益率で残りの工事を受注すべきかをすぐにわかるようにし、必ず月に1回は営業・現業でこの数字を認識してもらうのです。

売上でなく利益を意識する環境づくりが目標利益管理の要だと思います。

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