今回から電子納品についてお話しします。
まずは概略です。電子納品とは従来、紙で納品していた様々な成果品(主には書類)を電子データで納品することです。膨大な書類がCD?R(1回だけ書き込み可能なCD)数枚の量になるとイメージしてみてください。
具体的には、CADやワープロソフト、写真管理ソフトを用い、図面や報告書、写真を指定された仕様にまとめます。そして最後は、CD?Rにて納品することになります。出し方にはルールがあり、代表的なものは以下の3つです。
・全体のルールを決めた電子納品要領
・図面に関するCAD製図基準
・写真に関するデジタル写真管理情報基準
これが工種や発注先に応じて、変わってきます。
現場の納品物が電子化されるということはつまり、すべての現場のすべての監督が、パソコンに無関係でいられなくなるということです。
もちろん、現場でなく営業所・支店で一括で支援する方法もあります。しかし写真管理や打合せ簿のような日々の作業は現場でやらざるを得ないでしょう。・・こう書くと、デメリットばかりのような雰囲気です。そこで、まずはメリットからお話しましょう。
まず、ペーパーレス化による省資源・省スペースが挙げられます。
工事規模が大きくなると、工事写真だけでダンボール何箱にもなり、ましてや打合せ簿や図面など合わせると、倉庫を借りる必要が出てくるほどです。小さい工事でも、いくつかあれば同じこと。大量の書類の保管・管理に悩まされる方は少なくないでしょう。
それが、ペーパーレス化で大幅に減ります。書類の種類にもよりますが、ダンボール一箱が、CD?R2?3枚に収まります。1年間でダンボール50箱管理していたのが、CD?R120枚程度に収まったという話も聞きます(CD?Rは、ケース次第ですがダンボールの3分の1にもならないでしょう)。管理費、保管場所に苦労することはなくなります。
次に、書類の受け渡しが楽です。大きな箱を宅急便で送ることなく、インターネットの環境が整っていれば、メールで瞬時にやり取りできます。紙だと大きな図面になってしまうものも、簡単に受け渡しでき、事業効率化に一役買うでしょう。
修正や加工も楽です。たとえば、紙の図面で仮設計画をたてるとしましょう。まずコピーして、その上に鉛筆で足場や重機の絵を書きます。場合によっては、切り貼りを何回もすることになります。こればCADならば、トレーシングペーパーのような透明な面が何枚も使えます。これを画層(レイヤー)といいますが、画層を使うことにより、構造図に配筋図、設備図に仮設図がひとつのファイルに収まります。この画層は、簡単な操作で重ねたりはずしたりができますから、機器の納まりチェックや、また不要なものを一時的に消してそれぞれ目的に応じた図面を容易に作成できます。「部品」といって、重機や足場等をひとつの形に登録することも簡単なので、コピー・移動機能を使っての配置決めならば、紙に比べて数段楽でしょう。
写真も、パソコン上で何百枚でもかさ張ることなく保存閲覧できます。これも慣れればとても便利ですよ。
最後に、電子データならではの利点として、再利用しやすい・検索しやすいことが挙げられます。利用しやすい仕組みなしでは、これらは紙データ同様ただの板切れですが、利用できれば、仕事の効率を大きく上げてくれるでしょう。
メリットをまとめると
(1)成果品の保管スペースの節約
(2)電子メール利用による事業効率化の実現
(3)電子データであるため修正・加工が楽
(4)電子データであるため再利用や検索が簡単
となります。もちろん、よいことばかりではありません。冒頭でも述べましたが、このメリットを享受するためにはいろいろな壁が立ちはだかります。次回は、このお話をします。