前回に引き続き、IT活用の進め方について述べます。お話してきたように、ステップを踏むことにより、目的がはっきりして業務手順も明らかにできたとします。
もちろん、業務そのものも最適化、標準化され、IT化しやすい状況になっていなければなりません。この状態ではじめてIT化のスタートラインに立てたことになります。逆にいうと、この状態になる前にIT化をスタートさせたとしたら、確実に無駄な投資が発生することになるでしょう。
さて、スタートラインにたった状態で行うべき次のステップは、自社の成熟度レベルの把握です。今まで業務の視点を中心にお話していましたが、ここからは社内のIT活用の視点も加えて見ていくことになります。成熟度診断にはいろいろなものがありますが、簡易なものをご紹介しましょう。
1.IT活用力
レベル0:紙ベースの情報利用
レベル1:個人レベルで過去の電子情報利用
レベル2:部分的(部門内)に共有された過去の電子情報利用
レベル3:全社で統合され、過去+現在の状況が見える電子情報利用
レベル4:企業間の情報共有が実現し、現在と将来が見える電子情報利用
レベル5:企業間で最適化された電子情報利用
2.IT人材力
レベル0:IT知識なし
レベル1:個人ベースのIT知識
レベル2:IT兼務者によるITインフラ管理とIT知識普及
レベル3:IT推進キーマンによるITインフラ管理とIT活用支援
レベル4:ユーザーの視点でIT化要件の定義ができるIT経営企画人材
レベル5:高度のIT活用ビジネスモデル立案ができるIT経営企画人材
3.IT企業文化力
レベル0:文書化されていない仕事の手順
レベル1:部分的に文書化された仕事の手順
レベル2:文書化された仕事の手順
レベル3:文書化され、守られている仕事の手順
レベル4:例外を含め文書化され、守られ、継続的な改善が行われている仕事の手順
レベル5:バーチャルカンパニーとして統合化され、最適化された仕事の手順
4.ITインフラ力
レベル0:ITインフラなし
レベル1:ネットワーク接続されていない単独パソコン
レベル2:社内で統合化されていないネットワーク
レベル3:社内統合ネットワーク
レベル4:社内外イントラネット
レベル5:企業間ネットワーク
ここで重要なのは、インフラ整備というハード面は一面に過ぎず、企業文化や人材、活用力などと同時に評価されるべきであることです。日本はインフラ先行型が非常に多く、人材や活用力が追いついていません。よってITを過小評価する傾向があります。使う人のレベルに合わない道具は、宝の持ち腐れです。自社のITレベルを把握するようにしてください。
たとえば上記のレベル評価に当てはめてみて、バランスがとれていないとこ
ろは補強が必要です。特に、社内教育がきちんとできなければなりません。この教育は当然のことながら、IT関連に限らず、前述したように業務とのバランスが重要ですから、業務レベルアップのための教育体制も必要になります。多くの企業では、OJTという名の下に職場教育を優先し、集合教育(講座や演習等)をあまり行っていない傾向が見られます。しかし、職場教育は先生役(=上司)の質で大きく左右されます。集合教育で知識を身につけ、職場教育で経験を身につけるといった両輪が必要なのです。
IT活用は「急がば回れ」です。大変ですが、外堀を一個ずつ丁寧に埋めることが成功の秘訣です。