消費税と建設業

 いつものようにちょっとITから脱線しますが、最近相談の多い消費税対応についてお話をします。

 最終的な判断はまだとの話ですが、来年4月1日から消費税がUPする予定です。普通の業界であれば、まだ半年以上先のことかもしれませんが建設業界では、もう2週間もない話なのです。

 これは、消費税消費税改正法の附則に工事請負に関する特例があるからです。具体的にお話しすると、消費税の原則は請負工事において仕事の目的物を全て引き渡した時に消費税額が確定します。つまり、引き渡した時が平成26年 3月31日より前ならば、消費税は5%の請求書です。そして、平成26年4月1日以降であれば、消費税が8%の請求書を渡す。売買契約も含め、一般的な取引では誰もがわかる普通のことです。

 しかし、工事請負契約には経過措置というものがあります。これが特例の中身です。具体的には新税率施行日の半年前を「指定日」とし、「指定日」の前日までに締結した工事請負契約であれば、引き渡しが新税率施行日以降となっても旧税率が適用されるというものです。今回の消費税8%は

 「施行日」平成26年 4月 1日
 「指定日」平成25年10月 1日

です。もう2週間もないというのはこのことなのです。「う~ん、ピンとこない」というかたも多いと思うので具体的な例をあげます。

ケース1
  契約日:H25/ 9/30 引渡日:H26/ 3/31 これは原則で5%

ケース2
  契約日:H25/10/ 1 引渡日:H26/ 3/31 これは原則で5%

ケース3
  契約日:H25/10/ 1 引渡日:H26/ 4/ 1 これは原則で8%

ケース4
  契約日:H25/ 9/30 引渡日:H26/ 4/ 1 これは経過措置で5%

ケース1と2は問題ないと思います。びっくりするのはケース3でしょう。もし、10月 1日以降に契約をした場合、引渡が 4月 1日以降になった時点でその工事全体が消費税8%の契約になるということです。ケース2とケース3はわずか1日ですが、2000万円のおうちを作る契約ならば、60万円も支払う消費税が変わってしまうのです。

 さらに問題なのはケース4です。契約日が「指定日」の前日つまり 9月30日の場合は、4月1日を超えても消費税が5%のままなのです。笑い話のように聞こえるかもしれませんが、仮にこの契約が3年契約ならば3年後の平成28年でもこの契約の消費税は5%のままなのです。(大きな工事では実際にこれぐらいの長期契約はざらにあります)世の中が10%時代に突入しているかもしれないときに消費税5%の契約があるなんて悪い夢としか思いたくないですよね。

 実際に平成9年に消費税が3%から5%に変わった時も同じように経過措置という特例がありました。その時も消費税が3%の長期契約が5%の契約に混ざって残っているということを経験した記憶があります。今回も同様のことが起きるのです。

 ただし、 ケース4はさらにめんどくさい条件があります。もし10月 1日以降に当初契約より増額分があったら、その増額分だけは消費税8%が適用されるのです。一つの契約で消費税5%と8%が混在するなんて、あまり考えたくないですよね。でも現実には多く起きることだと思います。

 また、この「契約日」「引渡日」というのも大きなポイントです。工事を実際に行う「着工日」も関係なければ、工事が完了する「竣工日」も関係ありません。あくまで、工事請負契約が定める「契約日」と「引渡日」が消費税を決めるキーデイなのです。

 既に支援企業も含め、 9月30日までの駆け込み契約があちらこちらで行われています。内容を十分確認の上、無理のない契約を行うようにしてください。次回はもう少し具体的に下請契約や前払い金等にも触れていきたいと思います。

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