消費税と建設業(その3)

 前回に引き続き、消費税増税対応についてお話をします。

 今回からは各ケースにおける契約上や工事上の留意点についてお話ししたいと思います。

(1) 指定日前の契約で年度内工事
 契約日:H25/ 9/30 引渡日:H26/ 3/31 原則5%

 このケースの場合、一番のポイントは年度内に工事が完了するかどうかになります。仮に年度を超えた場合、上記は指定日前の契約なので消費税は5%のままです。つまり、4月になっても5月になっても受け取れる消費税額は5%のままということです。契約書類は引渡日修正は必要かもしれませんが、消費税の修正は不要です。

 ただし、材料等の支払いが4月を超えた場合、当然のことながら売買契約なので、支払日のみが条件となり、消費税8%で支払う必要があります。「受け取るのが5%なのに支払うのは8%なの?」その通りです。そこがこの契約の怖いところなのです。

 このケースの場合は極力年度内引き渡しを守ることが最重要課題になります。いつも以上に丁寧な実施工程計画を立てることはもちろんですが、シビアで現実な工程の進捗管理を行い、早め早めの対応を心がけ、できるだけ年度末にしわ寄せがいかないようにするべきです。

 特にいつもならしっかり休もうと思いがちな年末年始もこのケースの工事に対しては少し休みを減らしてでも年度末に余裕をもたせることを検討することをおすすめします。年末年始にしっかり休んだおかげで、消費税3%分の余分な出費が出たら言い訳できないと思います。

(2) 指定日後の契約で年度内工事
 契約日:H25/10/ 1 引渡日:H26/ 3/31 原則で5%

 このケースも前のケース同様、一番のポイントは年度内に工事が完了するかどうかになります。ただし、前のケースと大きく違う点は年度を超えた場合、指定日後なので、契約の消費税額が8%に変わるということです。

 「じゃあ、安心だな。むしろ、3%余分にもらえるんだ」と思っている方はよっぽどいい発注者に恵まれているんでしょう。現実はかなり厳しい話になるのではないでしょうか。具体的には仮にその契約書が税込で消費税率を明示していなかった場合、「税込だから5%でも8%でもこの金額は変わらないよね」と言われる可能性もゼロではないでしょう。事実上の値下げ圧力です。おかしい話かもしれませんが請け負けといわれる建設業界ではありえない話ではないと思います。

 このケースの場合やはりも極力年道内引き渡しができることが一番重要になると思います。工程をしっかり立てて守る。工程に影響が出そうな事項をあらかじめ予想して、現実的にできる対策をきちんと立てておくことが大切です。いつもより何倍も工程に気を使ってもらうよう協力業者を含む、関係者に徹底しましょう。

 しかし、それでもどうしても引き渡しが年度を超えそうになった場合はどうすればいいでしょう。私のおすすめは年度内で部分引渡でもいいので、その契約を精算することです。こうすることで、部分引渡した部分は5%、残りの部分は8%といった契約が結びやすくなります。

 例えば、1000万円の工事契約で丸々5%が8%に変わったら当初の50万円(1000×0.05)の消費税が80万円(1000×0.08)の消費税になり、発注者の支払額は30万円もの増額になります。

 しかし、90%終わった段階で一度部分引渡をして、残りの額を再契約するのであれば、消費税は53万円(900×0.05+100×0.08)となり、発注者の支払額は3万円の増額で済みます。どちらが心証がよく受け入れやすいかは一目瞭然だと思います。

 そのためには年度内では無理だと判断した時点で区切りのいいところで部分引渡できるような工事の流れをあらかじめ作っておく必要があります。また、その途中精算額に間違いがないようにしっかりとした個別見積を事前に行っておくことも大切です。

 消費税対策は契約だけではないのです。

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