現場管理のレベルアップ(その2)

 前回は現場管理の主要項目概要を紹介しました。具体的には、

 Q(Quality:品質管理)
 C(Cost:原価管理)
 D(Delivery:納期管理)
 S(Safety:安全管理)
 E(Environment:環境管理)
 N(Neighboring:近隣管理)
 O(Owner:発注者(元請)管理)
 S(Subcontract:外注(協力業者)管理)

 の8つです。今回から各管理項目でのレベルと向上方法についてお話しします。

 まずは、品質管理です。建設業界ではISO9001 の取得が入札要件になっていることがあり、多くの企業で品質管理の仕組みづくりが行われています。しかし、仕組みがあるのと機能しているのは別の話です。形骸化や書類作りが目的化といった本来の意図と離れた状況になっていることをよく聞きます。ISOという視点を離れて自社のレベルを見直すはいいことだと思います。

レベル0:管理なし
 建設業界でこのレベルはないといいたいところですが、小さな補修ややっつけ仕事(応急処置的な工事)、数人の企業ではないとは言えない状態です。この状態だと苦情が出てから対応するといった感じで、コストや納期を最優先にしていることが多いです。

 まずは守るべき品質(顧客が求めている最低限の機能をある期間提供できるために必要な工事の精度)とは何かを決めるところが次へのレベルアップのポイントです。

レベル1:場当たり的な管理
 品質管理という名前はあまりないが品質を意識しているといったレベルです。守るべき品質は一応決まっているものの手順は担当者任せで社員教育、情報共有もあるかどうか微妙な状態です。

 この段階ならば、手順書をつくることが第一となります。最初はどの担当者も必要な手順から初めて、徐々に手順書を増やしていくことになります、この段階ではベテランの知恵(暗黙知)をまず文書化(形式知)にすることがレベルアップのスタートになります。

レベル2:手順がとりあえずある管理
 手順書はあるのだけけれど、現場に即したものでもなければ、だれでもできるレベルでもなく、その教育も仕組みはあるけどおざなりな状態です。

 必要なのは手順書を複数の関係者で見直すことです。具体的には初心者とベテラン、作業者と管理者といった立場や年齢が異なる関係者でみることでそれぞれが理解できる納得できる手順書にしていくことです。結果としてそれが標準化という次のレベルにつながります。また、標準化を定着させるための教育体制、チェック体制構築も重要です。

レベル3:標準化された管理
 一般的に言われるISO取得の段階です。もちろん、本来のISOの主旨からするともう一つ上のレベルであるべきなのですが、最初に作った標準手順書で落ち度がないと解釈すればISO的には問題ないというあまりよくない状態を維持します。改善も予防措置も自主的でない限り機能しないといったISOの欠点がこの段階のままにいる最大の理由だと思います。また、標準化されたゆえに臨機応変な対応ができなくなり、トラブル対処が遅れることもあります。

 次のレベルに行くためには、ひとつは標準化された手順をあえて各現場最適に落とし込むためにはどうすればいいかを実践することです。施工要領書は標準手順書に各現場独自の条件(実際の作業者、周辺環境、コスト等その他の要因)を考慮して作成することを以前お話ししましたが、それが本当に実践できるようにすることがポイントとなります。その点では改善のできる教育、教育側のレベルアップも重要な位置を占めると思います。

レベル4:継続的な改善のある管理
 あるべき姿というかなかなか大企業でも達成できない管理状況です。この状態になれば、年々品質は向上し、不具合は限りなくゼロになり、急なトラブルも対応できる。結果としてコストや安全にもいい影響を与えるといった段階です。実際にこの段階になっている企業というのはなかなかないと思いますが目指すべき形としてその状態を関係者で意識するようにしましょう。

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