現場管理のレベルアップ(その10)

 前回に引き続き、現場管理のレベルアップについてお話しします。


 前回までは個々の管理項目について、概要とレベルごとの内容およびレベルアップのためのポイントを説明しました。今回からレベルアップを進めるためにITをどう活用するかについてお話しします。

 管理をレベルアップされるためには記録をきちんとした形で残して共有し、同じミスをせず、好事例を活用し、現場の施工性や収益性、安全性等を高めることが重要です。そのためにはITを活用して効率よく、情報を作成、共有する必要があります。

 ITを活用するためには3つの視点が必要です。組織的にITを活用するための制度や業務、ハード・ソフトの環境(基盤)、扱う社員のスキルです。これらを万遍なく底上げすることが管理をより負担少なくレベルアップするためのポイントです。まずは、制度や業務いわゆる社内の仕組みづくりについて、管理と同様、レベルアップ方法を説明します。

レベル0:紙ベースでの仕組み
 このレベルは最近は減ってきていますが、小規模企業で民間工事中心だとはまだまだあります。手書きの記録用紙がダメではないですが、共有や再加工がしづらいために記録が生かされていないことが多いです。当然、社員の意欲も低下し、作成そのものが形骸化している状態です。

 レベルアップのためには、規模的に大きな現場や内勤の支援が行いやすい現場、ITの得手な社員がいる現場をモデル現場にして、試行を行うことです。形になるまでが大変なので、会社として公式に行うことが重要です。

レベル1:一部で電子データがある
 このレベルでは、なんとか一部の社員が管理帳票を電子データで作成し、過去現場のデータをうまく活用し始めている段階です。書式や手順も決まっていないために必要な情報が欠けていたり、本人以外がわかりにくい状態になっています。

 次のレベルに行くためには書式や手順を統一することです。もちろん、工種によって、必要なものが異なったり、現場規模によって作成できる内容が変わることがあります。そのため、あまり細やかな部分までは作りこまず、最低限記載してほしい項目やファイル形式、ファイル命名規則などを決めておきましょう。保存フォルダの作成手順も決めておき、事前に空フォルダを配布しておくと現場の負担は減るでしょう。

レベル2:書式、手順は統一され、利用されている
 このレベルでは、社内で書式や手順が統一されており、データは現場や年度を超えて比較しやすいような状態になっています。しかし、データ自身は個々人で持っているので、他の人が活用できるような状態になっていません。

 次のレベルアップはデータの収集と配布ができる仕組み作りです。会社の特定の場所に集めることで他現場の社員が参照、利用できるようなにします。自然と集まるのが理想ですが、最初は強制的に集めたうえで、強制的に配布利用を促進するような支援策も必要だと思います。

レベル3:全社的にIT活用ができる
 このレベルでは、データの共有ができており、全社的にITを活用した管理ができている状態です。会社としてもIT活用を前提とした管理基準、手順となっており、他現場での不具合事例より予防処置の実施ができ、好事例により施工性や収益性、安全性向上が可能になっている状態です。

 次は当然、他社特に協力業者を巻き込んだIT活用になります。環境や人のスキルなど課題は多いですが、まずは相手の企業レベルに応じた支援を行い、利便性を知ってもらうところから始めましょう。

レベル4:社外も巻き込んだIT活用ができる
 このレベルは仕組みが自社にとどまらず、業者へも展開することによって業者の施工性や収益性が改善し、最終的に自社に恩恵が返ってくることを目指している状態です。

 ホームページを活用した情報展開などもこのレベルで行うことで建設業自体の底上げにも貢献していくことが重要です。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする