現場管理のレベルアップ(その5)

 前回に引き続き、現場管理のレベルアップを各管理項目ごとにお話しします。

 前回はD(Delivery:納期管理)のレベルと向上方法をお話ししました。今回はS(Safety:安全管理)の話をします。

 「安全第一」の看板や垂れ幕、「ご安全に」といった現場挨拶でもわかるように安全管理は現場でとても重要です。しかし、本当に一番かといわれると誰もが目線をそらさざるを得ないのが現状ではないでしょうか。

 平成25年度の死傷者数(休業4日以上)は15762人で全産業の14.9%を占めます。就業人口が8%前後のことを考えると少ない比率ではありません。以前に比べて減ってきてはいるもののまだまだ道半ばといった感じです。

 主な原因としてはコストと意識の問題だと思います。特に昨今の公共事業縮小に伴う過度な価格競争のしわ寄せが安全設備にいっているのは間違いありません。しかし、意識も問題です。せっかくの安全設備があっても利用しないもしくは間違った使い方をして事故にあっています。これをカバーするのが安全管理です。

 適切なルールを作り、守らせる。事故が起きた場合に速やかに対処するとともに再発防止策をたて、同様の事故を起こさない。コストはそんなにはかかりません。大事なのは意識です。安全設備をおろそかにしていいわけではありませんが安全管理はコストがかかるというのは設備面だけをとらえているからそう感じるのです。そこを変えていく必要があります。

レベル0:管理なし
 さすがに公共工事ではないと思いますが、民間の小規模工事ではいまだ多くみられます。安全帯やヘルメット未着用での高所作業や第3者がいるところでの安全柵未設置等見るに堪えない現場のレベルです。

 このレベルからあがるのは会社で「べからず」集を作成し、周知することです。まずはやってはいけないことをルール化することから始めることになります。イラスト入りのポスターなどは建設業協会等でも入手できます。簡単でわかりやすいものでだれもがなるほどと納得するものからスタートしましょう。

レベル1:場当たり的な管理
 このレベルは基本ルールはあるものの手順的なものはなく、現場監督個人に依存している状態です。個人的なノウハウで安全設備が設置されており、原価管理でのコスト算定もバラバラな状態がこのレベルです。また、作業手順書にも作業そのものが書かれていても安全への留意点が記載されていない状態です。

 次へのステップは、ある程度全社的に使える手順書(例えば仮設設備の設置、コンクリート打設等)の中に安全上の注意点を記載することです。もちろん、手順単位で必要な安全設備も明記し、過不足ない安全な環境をつくれる準備ができるようにします。

レベル2:手順がとりあえずある管理
 このレベルは安全に関する手順や標準設備も主要な作業で定義されており、社員がそれを参考に安全環境を整えている状況です。ただし、事故が起きた場合、対象現場で対処はしても、全現場での再発防止までにはいたらず、安全教育も組織的な対応には今一歩といった状態です。

 次へのステップはもちろん全社的に、組織的な安全管理ができる仕組みづくりです。具体的には組織的な安全教育や事故発生後の再発防止のための全社的取組、社内の標準的な安全基準の策定、新しい作業が発生した際の安全評価とその定型化です。

レベル3:標準化された管理
 一般的な中堅企業以上ならば実現しているだろうレベルです。特にある程度の規模以上の公共工事を受注している企業の場合は仕様書等の規定から書類作成も義務付けられており、一定の仕組みを作っていることが多いです。また、品質管理のISO9001と同様にCOHSMSと呼ばれる建設業労働安全衛生管理システムを導入している企業もこのレベル以上となります。

 次のレベルへは、事後処理的な安全対策ではなく、予防処置を積極的に行う状況です。ヒヤリハットレベルの危険要因についてもきちんと対応していく仕組みづくりが必要になってきます。

レベル4:継続的な改善のある管理
 このレベルになると自社に安全管理がとどまることはありません。現場では発注者から元請、下請けと多くの会社がかかわっており、その1社でも不安全な行動を起こすことで無事故無違反がくずれさります。

 よく一緒に仕事をする協力業者はもちろんのこと、自社現場にかかわるすべての建設業者に積極的にかかわっていくことがこのレベルでは必要になります。

 安全管理を徹底することはお父さんを、だんなさんを、息子さんを、(もしかしたら奥さん?娘さん?)を無事にその人の家庭に返すために必要不可欠であり、建設業のマイナスイメージを払しょくするために力を入れるべき重要なことです。

 お金をあまり掛けなくてもできることはたくさんあります。気持ちよく働ける現場を目指してがんばりましょう。

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