前回に引き続き、現場管理のレベルアップを各管理項目ごとにお話しします。
前回はO(Owner:発注者(元請)管理)のレベルと向上方法をお話ししました。今回はS(Subcontract:外注(協力業者)管理)の話をします。
今回の外注管理はごく一般的に使われていますが、QCDSEのいずれかの中に含まれて表現することが多く、独立して話をすることは少ないです。特に建設業の業態として外注(協力業者、専門業者)を使うことは当たり前であり、QCDSEと密接に絡み合っているからです。
私が今回話す外注管理はQCDSEに関係する部分より、発注者管理と同様、協力業者との契約や出来高査定と支払、精算や施工中の打合せ、現場内教育を中心にした管理です。以前もお話ししたように外注依存が高い企業ではこの管理の出来がQCDSを左右するといっても過言ではないと思います。
外注管理で一番のポイントは、発注者管理と同様契約です。支払方法や出来高査定の時期と必要書類など基本的なことは必須ですが、自社のQCDSEでどのようなことを求められているか、打合せはどのようにすすめるか、工程会議への参画、新工法を含めた施工方法の提案等を契約書類の一部として渡すことが望ましいです。
元の会社では契約一般と安全全般での基本ルールを配布できるようにしたうえで、契約単位で特記事項を記載し、個別の現場ルールを作成したものを受入教育時に説明していました。手間はかかりますが、現場の基本方針や約束事を守っていただき、期待した成果をあげていただくためにはとても大切なことだと思っています。
二番目は、打合せです。朝礼、昼礼、現場巡回、夕礼もしくは終業前点検等の毎日の顔話わせタイミング、週間工程、月間工程の調整、安全協議会など会議でどのような内容を打合せし、調整したいかを明確に伝えることが必要です。もちろん、記録は最初のうちはこちらで作成しながら、徐々に外注側にも作ってもらうようにして、「言った、言わない」をなくすようにしましょう。できれば、新規受入教育時に職長にタイミングと主に話す内容を伝えておくといいです。現場の一日、主な会議を一覧表にすると説明しやすいです。
三番目は、外注の教育と評価です。新規受入教育で安全面を中心とした簡易教育を行い、定期的な安全教育を安全協議会の一部として実施している企業は多いと思います。工程も工程会議を通じて行っているでしょう。しかし、品質や費用面まで教育を意識しているところは少ないです。断片的なものは見かけますが、外注にのぞむ品質管理や原価管理を体系的に伝えてはいないように感じます。
「そこまでやる必要あるの?」と疑問の声も聞こえそうですが、高度成長期時代の社員が抜け、オイルショックでの雇用控え、さらに不景気での新規雇用の低迷により、現場監督の負荷は増える一方です。監督の負担を減らし、会社自体を少人数でも回せる体制にするには外注教育は欠かせないと思います。
評価については、多くの企業が望んでいますが実現までのハードルが高いとしり込みしているのが実情です。しかし、細かい基準を定めるより
・よかったか悪かったか
・よかった点はどこか
・悪かった点(改善、教育すべき点)はどこか
・また一緒に仕事したいかしたくないか
程度の評価でスタートしても問題ないと思います。自社の社員評価もうまくいっていない状態で外注の評価はできません。簡易な評価が最終的には長続きして、評価しやすいと思います。
レベル0:管理なし
とりあえずは外注と一緒に仕事しているだけのレベルです。契約も口頭契約が多く、支払管理も本社(経理)にお任せ状態です。
まずは、契約書類も整備し、現場単位で契約内容が確認できるようにしましょう。支払も事務所にお任せではなく、出来高査定をしっかり行い、必要に応じて、本社(経理)にフォローをできるような体制づくりをしましょう。
レベル1:場当たり的な管理
このレベルでは、契約、支払管理は重要だとわかっているが、個々の監督の意識に依存している状態です。
次のためには手順書の整備です。手順書といっても契約の仕方ではなく出来高査定や打合せといった現場で外注と行う業務についてのものです。また、現場ルールの策定や特記事項の記載ポイントなどもまとめておくと現場運営が円滑に進みやすいです。
レベル2:手順がとりあえずある管理
手順はあるが全社的な管理、支援ができていないため、現場監督が奮闘している状態です。出来高査定は現場で行うものの請求は本社(経理)に行っている企業の場合、請求がいっているかどうかは現場でわかりません。
次のレベルのためには、全社的な契約管理と出来高査定、請求催促支援です。よく契約外工事を行ったために契約以外の請求をしたい外注が現場監督に遠慮して、最後まで請求を伸ばすようなことがあります。この場合、変更分を元請に請求できずに利益を減らすことが少なくないです。定期的に契約内容と現場での外注施工状況を確認し、外注企業の請求担当者に不一致がないかをヒヤリングするようなことや契約前にしっかりとした説明を本社側で行うことが大切です。契約の変更管理が一番のポイントになるでしょう。
レベル3:標準化された管理
このレベルまで行けば、トラブルは最小限になっていると思います。契約、査定、支払、精算も滞りなくすすみ、変更管理もできている状態です。
次のレベルは教育による外注力の底上げと評価による良質な外注の確保になります。ここまで手を付けることはなかなか難しいですが、まずは現場単位での安全教育以外の教育を定例会議のあとや有志による終業後の時間に行うところからスタートしましょう。理想を言うと懇親会などとセットにできるといいですね。(ノミニケーションは大切!)
レベル4:継続的な改善のある管理
このレベルになると教育というよりは外注業者育成ということも視野に入ると思います。建設業の底上げというわけでもないですが外注業者と一体となって、工事を行うためには外注業者のレベルアップは欠かせません。「教えるだけ教えたら他の企業に行かれた」といったこともないわけではありませんが、「情けは人の為ならず」です。きっと自社に帰ってきます。無理のない範囲で少しずつ育てていきましょう。
「外注さんは使い倒してなんぼ」みたいな時代は終わりです。共存共栄のためにどうすべきかを外注企業といっしょに考え、進めていくことが建設業の評価をも変えていくと思います。