前回までで施工時までの原価管理のポイントをお話ししました。原価改善の例とそのための情報の集め方について若手でもできる方法をお伝えしました。今回は竣工時のお話をします。
5.竣工時の予算管理
工事も終わりが近づくと竣工書類の準備も含めて、あわただしくなってきます。特に工期の短い工事の場合、中間検査などがないこともあり、検査の雰囲気もつかめないため、検査準備に思った以上に時間がかかることが少なくありません。そのため、原価管理に時間をかけにくくなってきます。
しかし、「終わりよければすべてよし」といわれるように最後のしめはとても重要です。竣工時に留意すべき点についていくつかポイントを説明します。
(1) 残工事の予算確認
まずは、残りの工事内容と予算の整合性をとることが大切です。竣工時は意外と細やかな仕事が残ります。そのため、予算自体が小さいものが多く、内容的にも見落としがちになります。工程表や図面、実行予算書を見るだけでなく、現場を何回も巡回して竣工までに行うべき工事内容の把握とそのための予算確認をしっかり行いましょう。また、仮設道路の撤去や周辺環境の原状復旧など当初予算で漏れているもしくは想定していなかった項目があることも少なくありません。現場内の構造物だけでなく周辺環境も含めて、どのような状態が竣工なのかを発注者と十分協議してください。もちろん必要に応じて追加予算を請求することも忘れないようにしましょう。
(2) 業者や材料支払いなどの未払金の確認
現金払いならそう問題はないかもしれませんが、掛けで購入している場合は支払タイミングをしっかり確認して、未払金を確実に確保しておく必要があります。特に竣工後の発注者の支払時期と業者や商社等への支払タイミングによっては資金繰りにも影響する可能性があります。竣工書類をきちんと作成することも大切ですが、竣工後の支払手続きの準備もしっかりすすめておきましょう。
(3) 竣工後の人件費ほか経費
竣工検査も完了し、引き渡してしまったらあとはすぐに次の現場というわけにはいかない場合もあります。具体的に言うと発注者用提出竣工書類の作成を優先するために社内での竣工関係書類は後回しになってしまうことがよくあります。そして、それが竣工検査後につくることも少なくありません。仮設事務所は撤去しても、作業をどこか(支店や本事務所)でやるかぎり人件費はある程度見ておく必要があります。利益が厳しいものであれば全社経費に見込んでもらうこともありますが、原則としてやはり工事に関する費用は工事でねん出することが大切です。また、書類の製本費や竣工書類の保管費などひとつずつは大きくないですが経費もそれなりに必要です。このような費用もしっかり意識しておいてください。
(4) 稼働日前までの予算
竣工後すぐに稼働する施設や道路であれば問題ありませんが、状況によっては少し稼働日前まで時間があることもあります。この場合稼働日直前に再度簡易清掃を求められることがあります。当然有償であるべきですが残念ながらサービスすることがほとんどだと思います。そのため、どのようなことをすべきか要望を発注者とよく打合せしたうえで必要な予算をもっておきましょう。
工事は生き物だと思います。だから、どんだけ想定しても必ず想定を超える出来事が起きることもあります。そのことを意識して、もしものときの備えになるように予算改善を意識することの大切さとそのために必要な情報収集の方法についていろいろ行ってみてください。