前回は竣工時の原価管理をお話ししました。未払金管理や竣工後の予算などついバタバタなりがちな時期だからこそ注意してほしい点について留意点を話しました。今回は竣工後の話をします。
6.竣工後の予実照査と歩掛整理
竣工後、すぐに次の現場の準備をされているかもしれませんが、できれば、それと並行して行っておきたいことがいくつかあります。
(1) 予実照査
竣工時に予定利益目標に対する実施利益結果を比較しているのは当然ですが、細部にわたって照査をしているかというと残念ながら行っていないケースがほとんどではないでしょうか。特に間接費などは世の中の趨勢に無視している予算組みをしていることが少なくありませんが、それもちゃんと予算が実績とどう異なっていたかを照査していないからです。
携帯電話普及時にはそれまでの固定電話では考えられないほどの金額がかかっていました。最近ではパケット定額制や同じキャリア間の無料通話などのサービスが出てくることで数年前よりは抑えた金額になっていると思います。このような時代の流れをきちんと押さえ予算時に反映させるためには実績を把握することが一番なのです。
また、環境問題や近隣対策も以前よりよりシビアに丁寧な対応が求められるようになってきました。そのための仮設費用や計測費用は無視できない金額になってきているのはいうまでもありません。
設計時にあらかじめ入っていればいいのですが、世の中のほうが設計より一歩進んでいるのが常です。そのために、ある程度予測して実行予算を組んでいくしかありません。
変化している経費や新しい項目は竣工後に必ず予実照査を行い、どれぐらいの差異があったのかをきちんと把握しましょう。もちろん、そのためには月々の原価管理ができていなくてはいけません。せっかくの予算組みを無視して、適当に集計していたのでは確認できないからです。
また、天候や周辺環境など当初想定していなかった出来事が起きていることもあります。竣工時に振り返って、原因と今後の対策を考えるまとめることは次の工事のためにとても大切です。
(2) 歩掛整理
世の中は日進月歩です。機械もそうですが、労務費、外注費も同様です。新しい機械や工法が次々と出てくることで、同じ構造物を同じ場所に作るのだとしても数年前と今では違う単価になることがあります。機械の性能アップなどは典型的な例でしょう。もちろん、創意工夫や新しい治具でも変わっていることがあります。
そのために歩掛を取ります。天候や環境や協力業者、材料などいろいろな要素を含んでおり、必ずしも万能ではありません。そのため、意味がないという人もいますが、実績は何よりも代えがたい予算立案の際の資料になります。
大切なのは、どのような状況下や物量でその歩掛が達成できたのか周辺情報を付加して整理することです。そうしないと、安い価格だけが独り歩きをして、あとでとんでもない赤字現場を生み出す要因になってしまいます。
歩掛はついつい数字だけで整理する傾向がありますが、施工条件なしでは正確な施工計画ができないように、条件なしの歩掛では正確な予算は作れません。数字の独り歩きをさせないために条件を付けくわえ整理をすることが歩掛を活かすポイントだと思います。