前回まで3回にわたって、実際の原価計算方法の概要をお話ししました。今回は、項目分類についてお話をします。
5.勘定科目
最初にお話ししたように、原価管理にはいくつかの目的がありますが、大きく分けると社外に金銭的収支・資産状況を伝えるための「財務会計」と社内で経営判断や管理指標としてお金で評価できるようにするための「管理会計」になります。
目的が違うと当然、分類方法やまとめ方も異なってきます。「財務会計」は全国共通(最近は全世界共通に向かっています)で同じ仕組みにすることで税務や投資家判断が容易に行えるようになっています。一方、「管理会計」は社内での指標としてわかればいいので自由に決められます。極端な話、財務と全く違う項目でも問題ありません。
また、「財務会計」は高い正確さ必要なのに比べ、「管理会計」は正確さより迅速さが求められます。もちろん、「管理会計」も正確であるにこしたことはないのですが、多少の正確さを損なってでも、できるだけ短期間で金額を把握できることで次の一手が打ちやすくなるのであればそれが望ましいのです。
しかし、実際は両会計項目をバラバラで収集・管理するのは負荷が大きすぎるため、企業として必須である「財務会計」で必要な項目をもとに、細分化したい項目は細目で分けて「管理会計」を行っているのが現実的です。そこで、まず「財務会計」で基準となっている「勘定科目」について説明します。
勘定科目は大きく2つに分かれます。一つは、ある時点での会社全体の評価を金額で表すために使われるものとして「貸借対照表勘定」と呼ばれるものに属する項目です。「貸借対照表勘定」はさらに「資産勘定」と「負債・資本勘定」に分かれます。
もう一つはある期間での会社の業務の動きを金額で表すために使われるものとして「損益計算書勘定」と呼ばれるものに属する項目です。
基本的に原価管理で管理する原価はこの中で「損益計算書勘定」の「売上原価」(建設勘定だと「完成工事原価」)「仕入高」に含まれます。そのため、原価管理を行うためにはこの中を細分化する必要があります。その際の項目は「販売費及び一般管理費」に出てくる勘定科目を参考にすることになります。
具体的には労務費であれば「給料手当」「賞与」「雑給」「退職金」「法定福利費」が該当します。経費は「広告宣伝費」「容器包装費」「発送配達費」「車両関連費」「販売費」「厚生費」「減価償却費」「地代家賃」「修繕費」「リース料」「通信交通費」「水道光熱費」「保険料」「備品・消耗品費」「雑費」が該当します。
ただし、洗浄等で水を大量に使う企業であれば「水道代」は分けたほうがいいですし、工場単位や現場単位で「電気代」を管理する場合はこれも分けることが望ましいです。また、これらの金額を把握するのに「管理会計」ならば、メーターの測定量に標準単価をかけて金額を把握し、「財務会計」ならば少し遅れてわかる「請求書」により把握するといった手法を変えることもあります。
大切なのは、目的に応じて、項目名や手法を変えながらもできるだけ応用の利くような方法を考えることが最終的な管理の負荷を下げることになるということです。原価管理を行いたいがどんな項目で行うべきかわからないという方はまずは勘定科目で始めることがいいと思います。