前回に引き続き作業手順書の作成の進め方についてお話しします。
今回は、作業手順書に記載する項目についてです。作業手順書を作成する際によく聞かれることがこの項目です。「どんな項目を入れればいいのか」とか「手順書って作業を順番に書く以外に何を書けばいいのか」といった相談を受けます。
基本的な考え方としては、対象作業を行う上で必要な情報を記載すればOKなのですが、なかなか思いつくことは難しいです。今回は過去作成した経験を踏まえて、よく使われている項目についてお話しします。これを参考に足したり、削ったりしていただければいいと思います。
作業手順書は通常、目的や概要、作業を行うための条件が書かれた表紙部と実際の手順を順番に書いて、その横に品質や安全上の注意事項や対策を記載する詳細部の2つに分かれています。目的や概要が少ない項目の場合は表紙部の下部から詳細部が書き始められるものもありますが、必ず、表紙に準ずるものがあることを覚えておいてください。
1.表紙部に記載する項目
(1) 工事や期間、施工会社を特定する項目
・作成年月日、作成責任者、現場担当者(デート印枠の場合も)
・工事名、作業所名、担当施工会社、作業期間
(2) 道具、材料、環境等の工事条件を記載する項目
・使用機械工具、使用材料、保護具
・作業人員、必要資格、作業環境
・関連法令
(1) に記載する項目は作業手順書ならではで、(2) に記載する項目は作業標準書でも記載されています。もちろん、作業環境や人員は作業手順書を使用する現場によって加筆修正されますし、機械工具や保護具も現場ルールによって追加や変更があります。また、ベースとなる作業標準書の作成時は、比較的制限の緩い現場環境での記載内容を書いたうえで、手順書作成時に作成者の負荷が減るようにカッコ書きや注釈で利用の可能性がある工具や保護具、作業環境について記載していることが多いです。
新規の作業手順書を作る場合は、まず(2) の部分を埋めていくことが最初になります。特に必要資格は同じ作業でも高所で行う場合と低所で行う場合で変わったり、使用する機械でも異なることがあるので、機械や環境を十分に踏まえて記載するようにしてください。また、法令もその状況で変わる点を留意してください。
2.詳細部に記載する項目
(1) 一般的な項目
・作業名、作業内容
・品質上の注意事項、安全上の注意事項、その他の注意事項
(2) 安全に主眼を置いた項目
・作業名、作業内容
・予想される災害、リスクアセスメント、対応策、担当者
(1) は標準的な手順書で昔から使われているものです。品質と安全の両面から注意事項を記載し、工程やコストから注意すべき点をその他に記載していました。通常はこちらの手順書項目から始めてもらえればいいと思います。
(2) はCOHSMS(建設業労働安全衛生マネジメント)が普及してきて使用されるようになった手順書です。品質面は作業内容に一部記載するか別途でまとめて記載し、安全面に重きを置いた内容になっています。リスクアセスメントは可能性、重大性をそれぞれ3段階程度に分けて、掛け算で総合的評価を行い、高い作業には対応策を記載する仕組みになっています。
予想される災害には過去の事故や法令上危険作業と判断されている、もしくは安全規定があるといった内容も記載することで、単なる予測ではないことを示すようにします。担当者欄は作業手順書の際に対策の責任者を記載する欄として設けているので、最初の段階では記載しません。