電子納品(その2)

 今回は、電子納品に立ちはだかる壁についてです。

前回 お話しましたが 現場の書類成果物が電子化されるということはつまり、どの現場のどの監督もパソコンに無関係でいられなくなるということです。現場でなく営業所・支店で一括して支援する方法もありますが、写真管理や打合せ簿のような日々の作業は、現場でやらざるを得ないでしょう。

 具体的にみていきましょう。 

(1)まず第1の壁とは、情報リテラシーの壁です。リテラシーとは、読み書き能力のこと。よって情報リテラシーとは、コンピューターの知識や利用能力を言います。電子納品を行うためには、下記ソフトを使用できなくてはなりません。

 1.Webブラウザ(インターネットエクスプローラー)
 2.電子メール(アウトルックエクスプレス)
 3.表計算(エクセル)
 4.ワープロ(ワード)
 5.ウィルスチェック(ウィルススキャン,ウイルスバスター等)
 6.CAD(オートキャド,JW_CAD)
 7.PDF(アクロバット)
 8.デジタル写真管理ソフト(蔵衛門、工事写真館等)
 9.電子納品ソフト(電納Pro、電納ヘルパー)
 10.CD?Rソフト(WinCDR、B’s Gold Recorder等)

 最初の2つは、大抵の方がお使いだと思います。次の「表計算」(エクセル)・ワープロ(ワード)も、最近は多くの方が使われているでしょう。
 いっぽう、5番目「ウィルスチェック」ソフト。標準でインストールされていれも、積極的に使用しているという方は少ないのではないでしょうか。
 6番目「CAD」ソフトは、現場では使用されているかと思いますが、会社で組織的にとなるとどうでしょうか。
 7番目「PDF」ソフトは、電子納品を行うのでなければ、ほとんどの方が未使用でしょう。
 8、9番目のソフトは、電子納品のためだけのソフトです。そう難しくはありませんが、基礎知識は必要です。
 10番目のソフトは、音楽の好きな方ならご存知かもしれません。

 これらの知識を一度にもてとはいえません。しかし、どれも必要不可欠であるのも事実です。大きな壁と言えますね。

(2)第2の壁は、ソフト・ハードの壁です。上記ソフトを揃えるのはもちろんのこと、ハードもいろいろ必要になります。

 1.パソコン(インターネット接続可能なもの)
 2.CD-Rドライブ
 3.MOドライブ
 4.デジタルカメラ (100万画素以上)
 5.スキャナー
 6.カラープリンタ (できればA3出力可能なもの)
 7.大型ディスプレイ(検査用)

 1番目「パソコン」はもちろんとして、2、3番目の「CD-Rドライブ」「MOドライブ」は納品の際に必要となるものです。CD?Rドライブは、最近のパソコンに標準装備なので、お持ちの方も多いでしょう。
 4番目「100万画素以上のデジタルカメラ」は、工事写真撮影に必要不可欠です。
 5番目「スキャナー」は、押印してあるものをデジタル化するのに必要。
 6番目「カラープリンタ」は、A4までならよくお持ちと思いますが、今後はA3での出力も増えてくるでしょう。
 7番目「大型ディスプレイ」は、施主さんにもよりますが、手引き等には書いてあるもので、必要になってくるのではと思われます。

 これだけのものを揃えるとなると、かなりの出費です。小さい現場では、全部揃えるのは不可能でしょうから、
会社全体で計画的に導入する必要があります。

(3)第3の壁は、体制の壁です。今まで、建設業でのIT化の多くは、パソコンの得意な人によるものや、大現場での実験的導入という、局所的なものが多かったと思われます。しかし今後は、会社全体で電子納品に対応することとなります。
 第1の壁をクリアーするための教育体制の確立、第2の壁をクリアーするためのハード・ソフト導入計画を会社全体で立案し、運用していかなければなりません。そのためには、兼任でもかまわないので、会社全体を見通せるIT推進体制が必要です。また、小さな現場を支援する人手も必要かもしれません。
 このように考えると、情報システム部があるような大手ならともかく、中小企業にとっては頭の痛い話です。

 つまり、 (1)情報リテラシーの壁 (2)ソフト・ハードの壁 (3)体制の壁

 この3つの壁を乗り越えなくては、電子納品をスムーズに行うことはできません。
 電子調達のように、一部の営業部員が対応すればいいわけではありません。大変な労力が必要になります。しかし、目の前に近づいているのが事実です。
 
 次回は、電子納品の現状をお話します。

略語説明R021

 CAD(キャド)
  (Computer Aided Design)

 「コンピュータ支援設計」の略。略語そのものは皆さんご存知でしょうが、語のもとの意味は、
意外と知らない人が多いのでは。実は上記以外にも、「Computer Assisted Design」の略だ
とする説もあるそうです。どちらも同じ意味になるので、とりあえずは共存しているようです。
 最近のCADは、設計にとどまらず、見積や維持管理にも使われるような建設総合支援ソフトになりつつある
ようです。やがては、名前も変わるかもしれませんね。