以前、数回にわたって電子納品の事情をお知らせしました。県レベルでもばらつきがあり、市町村で始めているところはわずかでした。
あれから3年。計画こそ出てきましたが、実態が伴っていない状態です。昨年3月に「国土交通省CALS/EC アクションプログラム2005」が発表され、今年度までに様々な取り組みをする計画が立てられています。
まとめると
(1)情報交換
入札契約情報を提供する方法の工夫、ネット配布、電子契約による効率化、CADデータ交換標準の改良、3次元情報の利用を促進
(2)情報共有・連携
入札契約手続に関するシステム間連携による調達手続きの効率化と地質データや施設情報の提供、完成図を利用した管理図の蓄積、維持管理DB更新やGIS管導入
(3)業務プロセスの改善
数量計算をCADで可能とする体制整備によるコスト縮減や工事施工中の情報交換・共有の効率化
(4)技術標準
情報共有・連携に向けた必要な標準の整備
(5)国際交流・連携
CADの高度利用へ対応した国際標準機関との連携
です。電子入札や電子納品の枠組みが出来たことを前提にしており、高度利用や利用促進の内容となっています。
ところが、2007年度には本来本格運用されているはずの都道府県・政令指定都市において、まだ全面施行ではなかったり、人手が少なく準備期間を長く必要とする市町村では、アクションプランすらない場合も少なくないようです。もちろん、先進的な公共団体では、情報共有や施工中の情報交換までもシステム化し、導入が進んでいます。しかし、あまりにも温度差が激しいような気がしま
す。
実際に導入実施している地方公共団体でも、担当者のレベルにかなり開きがあり、事前協議すらままならない状態も起こっています。また、中間検査時の検査 パソコン等、双方で相談して準備を進めるはずのものであるのに、ほとんどが受注者側の負担になっています。操作する技術がない・機器購入の予算がないなど の理由です。発注者側が用意すれば、各会社で準備する必要もなく、分公共工事としてコスト減になると思うのですが・・。電子納品のためのソフト代・パソコ ン代があるからといって、割り増しの予算にはしてもらえませんから、完全な受注者の持ち出しです。
また、紙と電子データの2重管理に苦しめられている話も多いです。パソコンで見ることができないので紙で出すように、などという前時代的な要求がまかり通っているわけで、こういった話を聞くに付けても、日本の建設業のレベルが憂慮されます。
さらに、電子納品といっても再利用できるものではなく紙をスキャナーで取り込んだもの、画層管理が基準どおりでないものなど、かなりお寒い状態が多いようです。
今後、電子納品による地域差が広がれば、それがそのままIT活用度の差になっていくおそれがあります。まだまだ電子納品は、CALS/ECの根幹を成すところまで達していません。本来CALS/ECは、調査設計から施工のみならず、管理運用までもひとつのデータで行うことを意識し、各公共施設間での連動までも考えた仕組みなのです。それを踏まえると、まだまだ序の口のと言わざるを得ません。
施策を先に進めたい国土交通省の思惑もわからないではありませんが、地方ごとの差を埋めるような策も同時に講じていかなければ、ますます地域格差を助長させることになるでしょう。
地方の中小建設業の方々にお願いしたいのは、自社地域の地方公共団体の歩みが遅いからといって、のんびり構えていてはいけないということです。先行できれば、コスト削減や再利用による効率化が他社よりも早く見えてくるはずです。とはいえ、公共団体での教育や体制が不十分であるのと同様、中小建設業側においてもその準備は大変なものでしょう。それゆえに、なおのこと少しでも早く開始し、自社のペースで電子納品実現に向けて仕組みづくりを進めていただきたいのです。