前回に引き続き、現場管理のレベルアップを各管理項目ごとにお話しします。
前回はS(Safety:安全管理)のレベルと向上方法をお話ししました。今回はE(Environment:環境管理)の話をします。
地球環境に直接的な変化を与える建設業にとって、この環境管理はかなり難しく重要な管理だと思います。しかし、企業運営の観点からは優先順位としてあまり高くありません。多くの中小建設業にとっては管理対象でもないかもしれません。
とはいえ、昨今の地球温暖化や生態系保存の動きにより、発注者からの仕様として環境維持や向上を求められることは増えており、評価点として大きなウェイトを占めてきていることは事実です。次の仕事、地域住民からの信頼を増やすためにもこの管理を行うことは前回まで紹介したQCDSに劣らず大切なことです。
レベル0:管理なし
環境なんて飯の足しにはならないというのは言いすぎでしょうが、特に関心なく管理なく工事を行っている状態です。建設業では騒音・振動規制法や水質汚濁防止法など様々な法律で最低限の環境配慮が義務付けられていますが、自主的ではなくどちらかというと外部任せ(外部からの指導)で守っている状態です。廃棄物処理も行っていますがとりあえず、混廃(混合廃棄物)といった感じで分別や廃棄量低減は行っていない状態です。
次のレベルへは、当然この守るべき法律の把握や関連手続きなどまとめてわかるようにすることです。注意すべき点は規制は市町村レベルで異なることがあり工事対象地域の規制を確認する仕組みを用意することがポイントになります。各市町村の公式サイトにはパンフレットや手続き書類、連絡先が記載されているので入手問合せを行いましょう。(ときどき変わるため、定期的に見に行くことも忘れずに!)
レベル1:場当たり的な管理
このレベルでは法律上の環境管理はわかっているもののより具体的に守れるような手法(低騒音車両の利用や防音防振設備の導入)が個々人の管理にまかされている状態です。特に廃棄物処理は一部の社員が分別や低減に動いているといった感じでしょうか。
次へのステップは現場での具体的な管理手順です。各種測定装置の導入と記録のための使い方や用紙があると便利ですし、重機への給油時のオイルパン設置や残コンの処理ルール、廃棄物の分別の方法などまとめておくといいです。見てわかるようにイラストや写真がついているとよりいいです。建設リサイクル法に関してはいろいろな書籍や資料も出ているので参考にしてください。
レベル2:手順がとりあえずある管理
このレベルでは手順があり、社員がそれを参考に環境管理を行っている状態です。ただし、全社的な環境教育や環境目標(CO2低減)などはなく、組織的な仕組みはないです。
次のレベルへは、全社的な環境管理ができる仕組みづくりです。具体的には全社的な環境目標を掲げたうえで目標を達成するための教育を定期的に実施するとともに現場巡回により組織的に管理向上を図ります。
レベル3:標準化された管理
このレベルは一般的にISO14001導入企業の初期レベルです。逆に言うとISOの手法を導入することによりこのレベルに達することができると思います。法律的手続きや副産物、廃棄物の処理方法も全社的な基準で進められており、外部的にも一定の評価を得られている状態です。
次のステップは、より高い環境への貢献を行うための創意工夫を社内で共有し、一歩上の環境を目指せる仕組みづくりです。環境保全の事例発表会やその事例情報の共有、CO2低減効果の数値化と低減数値の達成度による賞与への反映など環境向上への取組が必要です。
レベル4:継続的な改善のある管理
このレベルになると当然、自社にとどまらず協力業者、発注者、地域住民も巻き込んで工事現場周辺の環境向上を目指します。
具体的には地域清掃やペットボトルのキャップ収集、周辺環境の保全支援(魚の放流や植林)、イベントによる地域環境への意識向上などがあげられます。環境負荷の少ない新工法の導入やリサイクル材料の使用など他現場への展開も踏まえた工事の取組を行っていきます。
地球温暖化は待ったなしです。建設業はその防止に大きく影響を与える分、貢献もできる業種だと思います。一歩上を目指してがんばりましょう。