現場における交渉のポイント

 前回まで消費税と建設業というテーマで消費税変更に伴う影響やその対策をお話ししました。今回はその派生で現場における発注者や元請に対する交渉ポイントについてお話しします。

 設計変更の留意点や変更のための準備は以前お話ししましたが、その中で現場が一番苦手としているのが交渉です。特に重機にも乗るし、測量もするし、現場書類も作るといった中小建設業の現場監督さんの多くは、発注者や元請に交渉するといったことをほとんどしないように思います。やることが多すぎて、交渉なんて気持ちに余裕がないと難しいことや言い負かされることが多いからと最初からあきらめていることが主な要因でしょう。

 しかし、消費税に限らず、厳しい予算の中、少しでも自社に有利に工事を進めるためには譲るだけでは絶対にダメです。変更に関する相談を受けたときに等価交換とまではいかないにしても、時間(施工期間)や空間(施工範囲)、お金(施工金額)で自社メリットを生み出すための努力をすることが大切です。

 よく、変更というとお金の話をすると直結しがちですが、施工期間を確保することで効率よく重機を回すことができたり、変更された施工範囲を絞り込んだり、逆に広げたりすることでトータル的なコストダウンになることも少なくありません。とはいえ、それがわかっていても交渉できていないというのが実情ではないでしょうか。

 それを踏まえて、いくつかのポイントをお話しします。

・最初にNoといわず、回答を明確にする
 最初の交渉は、その後の交渉の流れを決めるとても重要な場です。むずかしそうなことやパッと見はムリなこともすぐにはNoといわないようにしましょう。自社に戻ったり、現場を離れて冷静になると妙案が浮かぶことが少なくないからです。だからといって、「ちょっとそれは・・・」といったあいまいな回答はだめです。「即答はできませんが、会社に戻って上司と相談後、○○日までにご返事します」といった明確な回答をしましょう。ここでのポイントは期限を明確にすることで相手から時間的余裕を勝ち取るということです。

・キーパーソンや第三者を交える
 提案や相談が係員クラスからだと、悪い場合、係員のミス隠しというケースもあります。こんなものに安易に承諾すると完全にただ働きです。できるだけ、主任や所長といったお金に権限を持った人を巻き込むようにしましょう。また、内容が他業者にも影響が及ぶと判断した場合は昼の打合せや月例会などで関係者を巻き込み、自社以外にも認知してもらうことでできるだけ公平な環境下で交渉を進める場を確保するようにしましょう。

・目的を明確にする。
 提案や相談が作業そのものだった場合、そのまま鵜呑みにせずにどうしてその作業をするのかを必ず確認しましょう。確認しない状態だと他の提案や断る理由も明確にできません。特に自社に有利な作業方法が別にある可能性もある作業は絶対に目的を聞き出しましょう。

・資料や議事録など形を残す。
 これは前にもお話ししましたが、できるだけ交渉を資料や議事録など形あるものにしてください。特にこちらが交渉する場合は「聞いてない」とか「見てない」とか言われないように図表を中心とした資料を作成しましょう。もちろん、現場監督だけで資料作成をするのは難しいです。カタログ集や施工事例などをできるだけわかりやすい形で全社で見れるような資料集の棚を作り、利用できるような仕組みを整えましょう。

・代替案を検討する
 提案内容が間違いなくベストだと判断されない限り、代替案を検討しましょう。その際に相手にとっていい案、自社にとっていい案間を取った、もしくは別の視点からの案とできるだけ3つ考えるようにしてください。比較表にできるとよりいいです。こちらも現場監督にまかせっきりにせずに全社的に支援する仕組みがあることが望ましいです。

・交渉練習をする
 実際に現場の作業中に相談されたら、たとえある程度交渉術の知識があったり、社内ルールを決めていてもなかなかできないのが実情です。できれば、社内勉強会の形で過去の事例を題材に交渉練習をするような環境を作ることをおすすめします。もちろん、実際のときは練習よりずっと緊張やあせりがあるとは思いますが、練習していない人より何倍も気持ちの余裕があります。カタログ集からの読み取りポイントや比較表作成なども勉強会に入れるといいです。

 交渉は数をこなすしかうまくならないという人もいます。ただ、一つの現場でも交渉事なしに終わることはまずないでしょう。積極的に交渉することを会社全体で推進しましょう。きっと得られるものはあります。

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