財務管理(その7)

引き続き、財務管理についてお話しします。今回は目標利益管理、端的には利益率管理についてお話しします。

建設業での利益管理で留意してほしい点は2つです。1つ目は支払利息です。

みなさんご存知のように企業の利益段階は5つあります。一つ目は、売上高から売上原価を引いた売上総利益。建設業の専用科目で表現すると完成工事高から完成工事原価を引いた完成工事総利益です。次に売上総利益(完成工事総利益)から販売費および一般管理費を除いた営業利益。3番目が営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を取り除いた経常利益、4番目が特別利益を加え、特別費用を取り除いた税引き前当期純利益、最後に法人税等を引いた当期純利益の5つです。

製造業であれば、工場は売上総利益率を意識し、営業を含めた企業としては営業利益率を意識することが多いと思います。しかし、建設業は(特に赤字企業の場合)他の業種より支払利息が大きくなる傾向があることから経常利益率を意識する必要があります。

管理として安全側(利益率として小さくでること)を考えるのであれば、営業利益から営業外収益を加えず、営業外費用だけを引いた利益額もしくは利益率を財務指標としてとらえることが望ましいです。

赤字企業が目安とする損益分岐点売上高も単に売上原価(完成工事原価)の1部(主に現場社員の労務費)と販管費を固定費とみなして損益分岐点計算をするのではなく、さらに支払利息も固定費とみなして計算することが望ましいです。

実際、建設業が公共工事で入札する際に必須となる経営審査事項の指標の中にも純支払利息比率として支払利息を指標として項目があり、重要視されていることがよくわかります。

2つめの留意点は利益率です。利益率を考えるときに注意してほしいのは、売上総利益率(完成工事総利益率)は工事利益率とは異なることが多いということです。工事利益率は各社の定義によりますが、ほとんど完成工事総利益率より高くある必要があります。

理由は以前もお話ししたことですが、工事原価の中には完成工事原価にある原価の一部が含まれていないということです。具体的には本社内で書類作成や手配・見積等の作業している分の労務費や工事車両の損料やガソリン代などの工事経費の一部が含まれていないです。つまり、売上総利益率より高い目標工事利益率を設定しておかないと損益計算書での目標利益額に達しないのです。

別の言い方をすると損益計算書で売上総利益率を算定して、そのまま各工事での工事利益率としてはいけません。実行予算の費目範囲を明確にして目標利益率を定義をしてください。

違いを把握するには完成工事原価に含まれている費目のうち、実行予算に含まれていない費目を洗い出すか、対象となる完成工事の実行予算総計と完成工事原価を比較して、実行予算対象外の原価を明らかにしておく2つの方法があります。

前者の方法のように費目が明らかのほうが望ましいですが、なかなか手間がかかります。後者のように総額で把握しておき、差額は社内経費とでも称して、おおよその額を把握することから始めましょう。

この際に小規模工事は実行予算を組んでいないことが多いため、実行予算側の総額が出ないと悩まれている方もいますが、その場合はひとつかふたつの小規模工事で実行予算を策定し、請負金額との比率から標準的な実行予算率を設定し、小規模工事の請負金額の合計から実行予算額を逆算する方法をお勧めします。

小規模工事の総額が全体の完成工事高での割合が小さいか、ここの利益率の変動が小さければ、ここでの計算の誤差が大きな影響を起こさないと思います。

損益分岐点売上高も自社の固定費を明確にしたら、原価から変動費を算出し変動費率を出したいところですが、建設業では建築と土木はもちろん、工種によっても利益率が大きく異なることがあるため、通常の損益分岐点計算だとうまくいかないことがあります。

そこで、ある程度工種別に売上高を設定し、設定した工種別標準利益率から工事利益を算定して、その合計額が目標利益を上回るように何回か数字を入れなおすシミュレーションする必要があります。手計算では大変ですがエクセルのような表計算ソフトを使えばそんなに難しくありません。

支払利息のこと、工事利益率との違いを十分に把握した利益管理を行うようにしてください。

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