今回から在庫管理についてお話をします。
設備関係の企業はもちろん、専用材料を使う専門業者や建材、鉄筋などの一般資材を扱う総合建設業者とどの分野でも様々な材料を一時的に保有することがあります。
在庫とはその名の通り、倉庫に材料、仕掛品、半製品、製品といったものが在る状態ですが、一般的にはある時点でのそれらの数量もしくは評価した金額による資産を表します。
在庫管理はその数量および資産管理ということになるのですが、その内容は多岐にわたります。Wikipediaの定義を引用すると、狭義と広義の定義に分かれます。
狭義の在庫管理は保管・管理される在庫物に対して、品質および機能の低下とこれらによる価値(価格)の低下を最小限の費用で防止し、要求される搬入・搬出時の量と時間を十分満足できる状態に保つことです。これを個々の管理に分けると、入出庫管理、保管(品質・数量)管理、費用価値(在庫金額)管理となります。
また、広義の在庫管理はさらに常に変動する需要(出庫数量)を満足するように入庫数量を確保することが加わったものとなります。つまり、需要調整管理としても機能するということです。実際多くの製造業では在庫数量をもとに生産調整を行いますし、リードタイム短縮により在庫数量を減らす工夫をするなど生産管理と切ってもキレない関係になっています。
JIS8141:2001の定義によると「必要な資材を、必要なときに、必要な量を、必要な場所へ供給できるように、各種品目の在庫を好ましい水準に維持するための諸活動」と書かれています。品種、納期、数量、使用箇所が重要だということです。
在庫管理を関係者から見ると、
顧客の要求に対応させるために ⇒ 要求(計画)管理
不要な在庫を持たないように ⇒ 不要材管理
具体的に在庫を置くところと手順を決め ⇒ 位置管理
何をいくつ置くかを決め ⇒ 数量管理
運用しながら、その量と質を確認し ⇒ 保管管理
適切に修正を行う活動 ⇒ 実績管理
というとらえ方もできます。幅広い対応が必要とされるということがご理解いただけたと思いますが、現実は軽視されていることが少なくありません。在庫管理なんて簡単にできるという思いでつい、在庫品種に不慣れな事務担当や若手にお任せといった傾向が見られます。
結果として、不要な材料や製品が数年も置き去りにされていたり、整理整頓ができていないために、二重購入や探す時間が長くなったり、膨大な在庫が経営を圧迫したりと多くの企業で問題化しています。この根本的な問題は在庫管理が様々なことをルール化し、徐々に担当者を含む関係者のレベル上げをしていかないと解決しないということに企業が気づいていないことだと思います。別の言い方をすると在庫管理は何かをきちんと把握していないことが一番の問題ではないでしょうか。
「在庫が悪」という言葉があります。端的な表現ですが、どうも言葉が独り歩きしている気がします。本当は
【不要(無駄)な】在庫が悪
在庫【を把握できていないの】が悪
在庫【業務手順が決まっていない(守れていない)こと】が悪
なのであって、必要な品種を適切な数量で保有し、そのことをきちんと把握し、手順に従って、入出庫を行っているのであれば、何の問題もないはずです。つまり、「在庫【管理ができていないの】が悪」と置き換えたほうがしっくりくると思います。何はともあれ、在庫のことをじっくり考えてみましょう。