在庫低減(その2)

 今回も在庫低減のお話しをしていきます。今回は在庫改善対象についてです。

 前回、不要在庫を一掃する話をしました。とはいえ、実際は検討対象となる在庫品を特定の場所に移動するだけがほとんどです。明らかに劣化や損耗が激しく材料・商品価値がないものであれば処分できるのですが、そうでないものは「とりあえずとっておこう」となっていまいます。もし、前回の不要在庫一掃で捨てることを前提にすると作業が一向に進まないでしょう。そのために既存在庫から取り除く作業としたのです。

 移動した不要在庫は新たに処分方法を検討する必要がありますが、なぜか移動すると憑き物が落ちたように簡単に処分することができることが多いです。倉庫にあると価値あるものに錯覚するのかもしれません。もし躊躇する場合は期間(3ヶ月?半年?)を決めて、期間中出荷しなければ、一斉処分という形が割とすっきりするのでお勧めです。

 さて、残った在庫品はもう大丈夫かというとそうではありません。その量や質から改善すべき対象があります。今回はその視点をいくつかお話しします。

(1) 材料的視点

 材料的視点とは、物理的・金銭的・品質的な観点で在庫を低減する対象を考えるということです。在庫物そのものを見て判断する視点です。

 まずは、体積や重量が大きいものを検討します。倉庫スペースは有限ですし、重量物は人手が必要になります。1割減らすだけでほかの在庫物が3割ぐらいおけるようになったり、作業場や通路が確保できたりと思った以上の効果がでることがあります。

 次に金額が高いものです。こちらは場所を取らない小さなものでも在庫期間が長くなれば結果として、財務を圧迫します。特殊品が予備で購入されていたりするのがこのケースです。特に在庫品の価格を把握していないとよく放置されていることがあります。一定金額以上の在庫品をふるいにかけて検証をしましょう。できれば、金額表示をして、常に意識させることもポイントです。

 次は汚れやすい、壊れやすい等の品質劣化しやすいものです。こちらも保管上の注意はもちろんですが、定期的に状態を確認し、気づいたら処分するしかないといった状況にならないよう量をコントロールしましょう。

 最後は種類が多いものです。こちらは単に数量をコントロールするというのではなく、その種類を減らすことができないか、最上流の設計段階から見直すことが必要になります。特に部品類はできるだけ共通化できるかどうかを検討することが大切です。

(2) 業務的視点

 業務的視点は在庫物そのものを見るというよりは、在庫物を購入する、利用するもしくは製造する観点でできるだけ少なくしたほうが業務的負担・課題が少なくなる対象を考えるということです。以前、在庫低減は倉庫内の課題だけでなく、業務上の課題も解決しないといけなくなることをお話ししました。つまり、その課題の対象になる在庫物も低減対象としてとらえるということです。

 まずは、欠品・品切れが発生したり、納期遅れがよくあるものを検討します。管理不足と言ってしまえばそれまでですが、多くの場合、利用・販売機会が少ないとか量が変動しやすいつまり、大量に利用・販売するときもあれば、全く使わない・売れない時もあり、その差が大きいために在庫量をコントロールしにくいものだということです。調達期間が長い、購入頻度が低いものも同様です。これらは代替品や共通部品化ができればいいですが、そうでない場合は取扱いそのものを見直す必要があると思います。

 次は使う以上に買う(購入単位と生産単位があわない)ものです。いわゆる箱(ロット単位)買いのものです。小口購入の検討ができていないものが多いので、視点としては結構よく使います。複数の場所で使うものであれば、一括購入して分配する仕組みを検討することもあります。

 最後に入荷してすぐ使わない、入荷してすぐ使えないものです。入荷時期を早目にするのは欠品・品切れの観点から言うと有用ですが、別の視点から見ると購入の納期管理ができていないというものです。仕入先の状況を踏まえて、できるだけ在庫期間を短くできるようにすることを検討しましょう。入荷してすぐ使えないものとは利用までの準備が必要なものです。過剰な梱包や清掃が不十分なためにひと手間かけるものです。空いてる時間にやれるようにと入荷時期が早くなる傾向が高いです。こちらも仕入れ先との協議で対応できることがあります。

 上記の改善対象によっては数量低減に直結しない場合もありますが、在庫期間が短くなったり、在庫管理負担が減ったりと別の低減効果があります。数量だけの視点にとらわれないようにしましょう。

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