在庫低減(その8)

今回も在庫低減のお話しをしていきます。今回は低減を進めるにあたっての留意点についてです。

在庫低減を進める際にあたって、なかなかうまくいかない部分がいくつかあります。ヒトの話だったり、モノの話だったり、コトの話だったりするのですが、その中で特に過去の支援実績も踏まえて特に留意してほしい点を3つお話しします。

(1) 倉庫の整理整頓

当たり前のことですが、倉庫が整理整頓できていないと数量誤差もそうですが、廃番対象を見つけることにも苦労します。もちろん入庫出庫でのトラブルも発生しやすいです。

棚番をきちんと決めて、入出庫業務を正しくすれば、整理整頓をする機会はそうないはずなのですが、現実は月1回程度は実施しないとすぐに混沌とした倉庫状態になります。理由はもちろん、正しくない入出庫業務なのですが、繁忙期にはそれを守りにくい実情があるというのも事実です。

そのために倉庫の整理整頓を実施することは必要不可欠になるのですが、繁忙期だと忙しさについついおろそかにして、閑散期だと在庫数が少ないことから大した問題に感じないといった理由で実施を怠ってしまいます。

効果的な対策は倉庫状態の写真掲示と朝礼等での啓もう活動です。できれば、客先等の他人の目にさらされる機会(現場見学等)を作るのもお勧めします。もちろん、「倉庫が汚いのはよくない」という社内の文化が育たないと根本的には解決しません。

(2) システム入力の精度向上

こちらは以前もお話しした誤入力の話です。ひどい状態だと在庫がマイナスになったり、現実にない在庫品が数万点残っていたりします。信頼できない在庫数では在庫低減の効果が見れないためにどんなに改善を進めていてもやがて終息してしまいます。

入力精度を確保するための手段は棚卸による差異把握と原因追求、対策実施です。棚卸差異は上記の倉庫の整理整頓と同時に行う作業になりますが、上手にまとめて、差異を把握、関係者に周知徹底できる図表の作成がポイントになります。理想はシステム内に機能を有することですが、最初のうちはエクセルでもある程度トライアルをすることがお勧めです。

対策は単純に丁寧に入力してくださいは意味も効果もありません。バーコードやICタグなどによる入力負担軽減の対策は誤入力対策にもなっています。箱単位の管理や端数在庫品のみの集中保管など入力環境を整えることも誤入力対策になります。

もちろん、在庫品種数そのもの減らすことも大切です。在庫数自体が少なくなってきたら精度が上がるだろうと思う人もいると思いますが、品種数が多いと精度がなかなか上がりません。納期管理を適切に行い、必要な時に必要な量を入手できる状態をつくることで取扱品目は減らさずに在庫品目を減らすことはできます。製造業ならば見込生産と受注生産の比率を見直すことで同様のことができるのと同じことです。

(3) 入庫(準備)側と出庫(利用)の協議

倉庫は当たり前のことですが、入庫と出庫でほぼ担当が違います。必要なものを入庫して、必要なものを出庫しているはずなのですがなぜかいつの間にか各担当の都合が幅を利かせてきて、気づいたらその調整を倉庫が担っているという状態になっています。

入庫は調達側の都合、出庫は現場側の都合、製造業なら生産と販売それぞれの都合です。在庫量が多いときはこの都合は表立って見えてきませんが、少なくなってくると目立ってきます。目立たせなくないから在庫を増やしてごまかしていることが在庫の多い大きな理由になっています。

ほとんどの場合は納期を確保できれば出庫側の都合で対応可能です。しかし、納期を守れないもしくは守らないために入庫側の都合もも出てくるのです。単価的な都合でロット単位での購入や納期のずれがあることもありますがこれもある程度長期的な予測が立てることでカバーできることが多いです。

当然、この調整をするための場を設けることが解決策なのですがなかなか機能しません。機能しない一つの理由にどちらの都合を優先するのかが決まっていないことにあります。ただし、一方の都合を選ぶのではありません。それぞれの都合の落としどころをきちんと協議して決めるということです。お互いの都合をきちんと明示して、すり合わせることを定期的に続けることです。緊急的な対応にしても日ごろの協議があれば、そう大きな問題になりません。話すことが一番です。

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