前回に引き続き、在庫管理についてお話をします。今回から在庫内容を数値的に管理する手法をいくつか紹介していきます。
まずは、在庫回転率です。在庫回転率とは在庫が1年間に何回入れ替わっているかを見る指標です。回転率が高いほど、たくさん入れ替わっているということで効率がよいという解釈をします。式は一般的に
在庫回転率 = 売上高/平均在庫高
で表します。ただし、短すぎても問題になることがあります。製造期間もしくは調達期間との関係があるからです。ちなみに製品回転率を1年間(365日)で割ると在庫回転期間と呼ばれる入庫してから出庫するまでの平均的な期間が算定されます。
在庫回転期間 = 365日/在庫回転率
上記を踏まえて、簡単な例題で説明します。たとえば1年間で6億4千万円の売上があり、平均在庫高が4千万円とすると
在庫回転率 = 64,000万円/4,000万円 = 16回転
在庫回転期間 = 365日(1年)/16回転 ≒ 22.8日
と計算できます。1年間に倉庫の中身が16回入れ替わり、その倉庫での滞在期間が22.8日ということです。
ここでもし、製造期間もしくは調達期間が15日なら7.8日分は余裕があるということです。この場合はもう少し在庫量を減らしてもいいかもしれません。逆に製造期間もしくは調達期間が30日なら在庫量をもう少し増やしたほうが安心です。なぜならば調達期間より短い期間で発注しないと在庫切れを起こす心配があるからです。別の言い方をすると注文した製品が来る前に次の注文をしないといけない状況になるということです。
もちろん、調達期間の短縮により在庫回転率を上げていくほうが倉庫サイズも小さくなっていいのですが、発注頻度が上がりすぎるのも手続きが大変です。半月から1か月の間というのが一般的なようです。
さて、一般的な式を書きましたが、もう少しこまかく書くと在庫回転率は分子と分母にいろいろな数字が入ります。中小企業の経営指標と呼ばれる資料によると
製品回転率 年間売上高÷製品の平均在庫
原材料回転率 年間売上高÷原材料の平均在庫高
仕掛品回転率 年間売上高÷仕掛品の平均在庫高
で表すと書かれていますが、原材料や仕掛品は別の計算式もあります。分子を年間原材料費に置き換えて、
原材料回転率 年間原材料費÷原材料の平均在庫高
仕掛品回転率 年間原材料費÷仕掛品の平均在庫高
と計算する方法です。なぜこんなことをするかというと売上高に占める原材料費率が低い場合に、回転率をもう少し実態に近い評価をするためです。たとえば、
売上高:1000万円 原材料費:500万円 平均在庫:100万円
とすると
売上高÷平均在庫=1000万円÷100万円=10回転
原材料費÷平均在庫=500万円÷100万円=5回転
となり、半分の回転数となります。当然、在庫回転期間は長くなりますので、この結果と調達期間を比較する必要があります。なお、単一材料の場合は、年間出庫量÷平均在庫量でも算定可能ですので個別に管理する場合はこちらで計算するほうがしっくりくると思います。
いずれにしても、実態にあう分子と分母を選定してから計算し、在庫の持ちすぎかどうかを判断する指標の一つとして使ってみてください。