在庫低減(その7)

 今回も在庫低減のお話しをしていきます。今回は廃番基準についてです。

 前回もお話ししたように、在庫削減の目標設定には廃番基準や在庫上限値を決めておくことが不可欠です。判断材料がない状態で目標を設定することは難しいです。全体ではなく部分最適で検討する傾向が高くなり、関係者の賛同を得にくいからです。その中でも廃番基準はとても重要です。

 しかし、在庫に問題を抱えている企業で明確な廃番基準を持っていることは少ないと思います。特に原価把握ができていなかったり、在庫に対する責任が不明瞭な場合は基準がないケースが多いです。

 余分な在庫費用で、企業の運用資金が滞留しているという事実が認識できず、在庫低減で減った資金で設備投資や人員補充を検討できるといったプラスの効果もイメージできず、単に品揃えの安心感だけを求めている場合や出荷予定のない在庫品を早急に処分することで倉庫管理の負担が減るということがわかっていても倉庫担当がなぜか総務部的な管轄になっている場合などは廃番の必要性を感じることがないようです。

 在庫が多いことが営業側の評価に連動していない場合も同様です。在庫の種類が多ければ多いほど、「もしもの時」に対応できる、それが「顧客サービス」が向上すると思っているからです。探すのに時間がかかり、倉庫費用が余分にかかり原価が無駄にかかったり、古い在庫品があるために新しい商品を仕入れられなくて顧客に新しい商品を紹介できなかったり、在庫品の種類が多すぎて、的確な提案ができなくてもいいはずはありません。少量の在庫品を多品種抱えることは負担感があり、営業力を分散していることを自覚すべきです。

 「売れない」もしくは「利益の出ない」商品を廃番にして、「売れる」もしくは「利益がより出る」商品に人材を注力させることは在庫低減のみではなく、企業の収益力にも大きく貢献することは言うまでもありません。

 では、廃番基準はどのようにして決めたらいいでしょうか。最初は廃番対象をどうやって選ぶかを決めます。これはいろいろな目線で対象を選ぶことが望ましいですが4つの視点を紹介します。

 1つ目は売上高や利益率、在庫回転率といった貢献度の評価です。売上のABC分析だけでもいいですが、できれば貢献度分析もあわせて行い、一定の貢献度以下の商品は廃番検討の対象とするというルールを決めましょう。

 2つ目は商品寿命です。JIS規格のような決まったものはその規格が変わるまでですが、一般的な商品であれば、その業界に応じた寿命を設定し、初めての発売からの期間がその寿命を越えれば廃番検討対象とします。

 「ロングセラーの大ヒット商品」はどうするのだといわれそうですが、そのような商品でも本当に改良や見直しが必要ないのかを考える機会は必要だと思います。廃番対象イコール即廃番ではないので、見直すきっかけを作るとしてとらえてください。

 3つ目は物理的(サイズ、質量)や品質(劣化、不安点)等の視点です。「それなりの需要があるから廃番にはできない」場合もあるかもしれませんが、代替品や改善の検討もなしに問題のある商品を保有しているかもしれないということも意識してください。一定のサイズ・重量以上のものや品質的な問題を出した商品、いわゆる不具合事例があった商品を抽出します。

 4つ目は業務的な視点で入荷しにくい、生産しにくい、管理しにくい商品を廃番対象商品として考えます。選びにくいと思いますが不具合事例があった商品を中心に各担当者へのヒヤリングで問題を感じる商品を抽出します。営業視点だけでない見方も必要です。

 次にいつ、だれが抽出、検討するのかを決めます。抽出作業は出庫側の営業担当だけでなく、入庫側にあたる仕入・生産担当、間の倉庫担当、システム担当と関係者が上記の選定基準で選定します。タイミングとしては最低でも1年に1回、できれば半年に1回程度で行いましょう。

 検討も営業にお任せというわけでなく、関係者を一同に集めた会議体で行うことが望ましいです。せっかくの規準で選んでも廃棄しない方向の人だけだと意味をなさないからです。様々な立場(減らしたくない人、減らしたい人の双方)から検討することで必要です。

 もちろん、会議は廃番して終わりというわけではなく、廃番した商品の代わりをどうするかもセットで考える必要があります。つまり、廃番だけを決める会議ではなく、次年度の取扱商品をどうするかを考える会議になるということです。そのために売上目標や取扱商品数の上限値、新しい商品の仕入れもしくは開発目標など廃番基準以外にも必要な決め事があります。廃番対象も単に廃番にするかしないかだけでなく改良で復活することも考えましょう。ファストファッションの世界では3か月ごとにやっていることです。一般の企業でも1年に1回はやれると思います。

 廃番業務を商品を減らすというネガティブにとらえるのではなく次のステップの準備業務として商品を見直す機会をつくるという認識が持てれば、基準に対する見方も変わるはずです。

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