前回に引き続き、在庫管理についてお話をします。今回も在庫内容を数値的に管理する手法を紹介します。
今回は流動数分析を使って、在庫状況を見える化します。在庫量は生産・注文量や生産・発注リードタイムと密接な関係がありますが、なかなかその目安を判断することは難しいです。
流動数分析とは入庫数量と出庫数量をグラフ化することで、在庫量と滞留時間(在庫日数)がわかるようになり、生産・注文量や生産・発注リードタイムを検討するための情報を提供することができる方法です。
具体的には横軸を時間、縦軸を数量にして、入庫と出庫の累積値の折れ線グラフを作成します。累積にすることで出庫累積曲線が入庫累積曲線を上回ることはありませんので、2つの右肩あがりの折れ線ができあがります。なお、データは日単位で入力しているケースが多いようです。記入時の注意点としては、入庫がなかった日、出庫がなかった日はプロットしないのではなく、累積値が変化していないとして、必ずプロットするということです。そうしないと正しい在庫量が把握できません。そういう点では、あまり入出庫の少ない材料・商品にはむかないと思います。
2つの折れ線が並んでいる簡単なグラフに見えますが、実はこれでいろいろなことが分かります。
まず、在庫量を把握したい場合は、入庫の累積曲線と出庫の累積曲線を垂直に見て、その差を確認することでわかります。つまり、入庫の累積曲線と出庫の累積曲線の縦方向の差が大きいと在庫量が多く、小さいと在庫量が少ないということです。また、その差にばらつきがあると在庫量が一定でないということです。少しずつ生産して入庫しながら月末にまとめて出庫するようなケースや逆にロット単位で大量入庫して、少しずつ出庫するようなケースでおきます。
グラフの下に入庫累積数と出庫累積数、その差である在庫数を表にして入れておくとよりわかりやすいです。なお、在庫数の最低値が安全在庫数に対してどうなっているか、最大値が在庫スペースに対してどうなっているかを見ることもできます。
1回の入出庫量も合わせて表示しておくと出庫量に対して、在庫量が多い場合は、その量そのものを減らすことも検討できます。エクセル等で作れば、最大値最小値平均値はすぐに出せるので、グラフといっしょに作成することをおすすめします。
次に滞留時間つまり在庫日数を把握したい場合は、入庫の累積曲線と出庫の累積曲線を水平に見て、その差を確認することでわかります。つまり、入庫の累積曲線と出庫の累積曲線の横方向の差が大きいと在庫日数が長く、小さいと在庫日数が短いということです。在庫量が一定のときであれば、累積曲線の傾きが急な場合、在庫日数は短く、累積曲線の傾きが緩やかな場合、在庫日数が長くなります。
注意してほしいのは在庫量が少ないから大丈夫というわけではないということです。少ない在庫量でも在庫日数が長い場合があり、前回の在庫累積金額が不必要に大きくなっている可能性があります。一般的には在庫量が多いものほど在庫日数が長い傾向がありますが流動数分析で隠れた滞留在庫を見つけ出すことができます。
現状の生産・発注リードタイムと在庫日数を比較することで、リードタイムの短縮や発注タイミングの調整を検討することができます。また、リードタイムの短縮と在庫量の関係も検討できます。仮にリードタイムを半分にすると在庫量も半分にすることができます。ただし、出庫ロットを半分、出庫回数を2倍にする必要があるので、その点は注意が必要です。
先ほどの例のように月末出庫の場合、リードタイムを踏まえて、発注タイミングをどこまで月末に近づけるかを検討することで在庫累計金額を少なくすることが可能になります。
このように検討や見方に少しコツ入りますが、慣れるといろいろなことが見えるのが流動数分析のいいところです。