前回に引き続き、在庫管理についてお話をします。今回は在庫管理することで業務の問題点をあぶりだすツールとなることについてお話しします。
前回と前々回に在庫が増える理由をあげました。営業、生産、倉庫、ITとそれぞれに理由があることを理解してもらえたと思います。建設業の場合でも、種類を多く持つ外構工事業者や利用頻度の高い管材をもっている上下水道工事業者、それ以外の設備工事業者などでも同様の理由をもって、在庫が多いとお聞きします。
在庫管理で一番最初に着手することは不要な在庫をもたないようにすることです。つまり、今の在庫数量を減らすことから始まります。そうするといろいろなところの隠していた問題が出てくるのです。問題点を氷山とし、在庫量を氷山周辺の水位に見立てると在庫量が少なくなり氷山の周辺の水位が下がると問題点の氷山が姿を現してくるといった感じです。
例えば、多品種保有で売れ筋を確保したいときに在庫を減らすとするならば、どの商品が売れ筋でどのくらい確保すべきかが把握できていないという問題点が明らかになります。
品質上問題のある商品の在庫量を減らすためにはどれくらいの比率で不合格品が発生しているか把握できていないという問題点がわかります。
倉庫の整理整頓やルールが守れていないことが原因で増えている在庫であれば、なぜ守れていないのか、整理整頓の障害になっている問題点は何かをつかみ、解決しないと在庫は減りません。
システムでの入力ミスで正確な在庫が把握できないために余分な在庫をもっていることがわかれば、ミスを減らす必要があります。
つまり、在庫管理を行い、不要な在庫をもたないようにするためにはその不要な在庫を生み出す原因をとりのぞく必要があります。在庫が多い場合はその曖昧さがすべて隠ぺいされ、放置できるのですが、少ないと放置できなくなるのです。これが在庫管理の大きな効果です。
もちろん、すべての問題を一気に解決することは難しいです。順番に手を付けていく必要があるのですが、在庫管理システムを導入するとすべての問題が一気に解決し、不要在庫が一掃されるような思いをいだいている人が少なくないのが事実です。
システムがきちんと作動するためには最低限数量管理ができている必要があるのですが、在庫が問題になっている企業で数量管理ができているところは皆無と言っていいと思います。
「数量が正確にわかっていないが、上司に言われたのでとりあえずわかる数量を入れておこう」「数量が入っているということはこれは正確な数字だろう」といった管理不在での結果、うその数字がまことしやかに入っているシステムが出来上がってしまいます。そして、このまま運用していくと「システムデータはいつも間違っている」となり、なぜか業務のせいにならなずに「ITは信用できない」といった困った信念をもたれる社員を生み出されるのです。
また、最適在庫を実現するために問題点を指摘しようとすると、各部門間で足の引っ張り合いのようなことが発生することも少なくありません。
「入庫担当がきちんと決まった倉庫の位置に入れないから数が正確に数えられないんだ」「営業がしっかりしないから飛び込み受注が多くて、予定が立てられないんだ」「データ入力しづらいシステムだから管理したくてもできないんだよ」といった話が飛び交います。もちろん、この中に問題点が含まれているのですが、解決できない前提条件のように語られていることが多いのです。
在庫管理をきちんと継続的に行うためには業務改善を抜きにしては無理なのです。それがこの在庫管理の難しさであり、在庫の問題が多くの企業であげられている理由なのです。