在庫管理(その12)

 前回に引き続き、在庫管理についてお話をします。今回は在庫数量に応じた管理を検討する手法を紹介します。

 在庫といっても、回転率の高い(入出庫頻度が多い)が数量が少ないものの材料・商品もあれば、回転率は低い(入出庫頻度が少ない)が1回の入出庫数量が多い材料・商品もあります。つまり、回転率・在庫数量とは別の視点の比較も大切です。今回はABC分析を行って、各材料・製品の管理手法の検討を行います。

 ABC分析とは「重点分析」とも呼ばれ、品目(製品・材料等)をある基準で順に並べ、高いものを重点管理するための方法です。一般的にはある期間(主に1年間)の商品別売上高(材料別仕入高)で分析することが多いです。

 作成ステップは
・在庫品目ごとに売上(仕入)金額を集計し、金額の大きい順に並べる。
・金額を累計し、全金額に対する累積構成比(%)を算出する。
・累計金額構成比を基に品目をA・B・Cの3つのクラスに区分する。

 グラフとしては、品目別金額を棒グラフ、累積構成比を折れ線グラフで表示します。このような図のことをパレート図と呼びます。

 金額で行う理由は単価が高くても数量が少ない品目と単価が低くても数量が多い品目とを同じ土俵で評価するために単価×数量である金額を使っています。

 ABCとはその中で売上高(仕入高)の多い順にA(主力)、B(準主力)、C(非主力)と3つのグループに分けるところからきています。一般的には累積構成比の70%~80%をA区分)、80%~90%をB区分、90%~100%をC区分とすることが多いです。

 一般的な傾向として、購入金額の80%は、全購入品の中の上位20%で占められているといった形で一部品目に金額が集中していることが多いです。パレートの法則と呼ばれるものです。

 では、これを利用して在庫管理にどう結び付けるかというとA区分の品目は売上に大きな影響力をもっていることから詳細な管理を行い、C区分の品目は影響力が小さいことから簡易な管理を行うといった感じで在庫管理をより効果の高い部分に注力させることができます。また、A区分の品目は入出庫の容易な場所に移動するとか管理がしやすい形態(ラック等)を優先的に配置するなどにより業務効率や投資効果をあげやすいようにすることもできます。品目を均一に管理するより、重点的に一部を管理するほうが効果的であるという考え方によるものです。実際、支援した企業でも管理負荷が半分になったところもありました。

 ただし、区分の目安は前述したものではなく、実際にはA区分はかなり絞った状態から初めて、ある程度重点管理の仕組みが出来上がってから範囲を広げるようにしました。複数の管理を行うことは意外と混乱を招くので注意してください。

 発注もA区分は定期(不定量)発注方式のような発注量をきちんと計算し、在庫量をできるだけしっかり管理し、B区分は(不定期)定量発注方式で一定の在庫量での管理、C区分は不定量不定期発注で必要な時に必要な在庫量を管理する(別の言い方をするとできるだけ在庫をもたない)といった分け方をします。

 ABC分析はこのような重点管理をするためにはとても便利ですが注意も必要です。今回のように売上金額や仕入金額で分類しても利益貢献とは別だということです。利益率が品目によって大きく異なる場合は利益率と数量の組合せで利益額で検討もしてください。また、今後の商品戦略で今はB区分の品目を引き上げていくとかA区分の品目を縮小していくとかいうのも考慮して最終的な管理見直しをする必要があります。

 さらに、ある商品が売れるとセットで別商品も売れるとかその評価期間中にたまたまよく売れた品目が含まれているとかいった一過性の要素も含む場合もあるので、経年的に確認していく必要もあります。

 いずれにしても漠然と全品目に一律の管理をするよりかは成果が出やすいので品目が多い管理をしている企業では一度分析してみることをお勧めします。

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