今回も引き続き社内システムのモダナイゼーションについてお話しをします。
前回はモダナイゼーションの留意点の1つとしてIT教育についてお話しをしましたが、今日は運用面についてお話しします。
(5) 新しい運用の仕組みづくり
IT教育と同様、導入後の話になりますが、モダナイゼーションを成功させるためにはシステム運用が業務にフィットしている必要があります。
モダナイゼーションの目的の1つに運用コストの削減があります。ただし、削減されるのはハードウェア、ソフトウェア、ネットワークといった設備的なコストであり、人的コストは内容によっては増える可能性があります。
システムのモダナイゼーションによって、パソコンだけだった入力端末がタブレットやスマホも対象になり、社内LANだけだったネットワークはインターネットを利用して社外まで広がることはそんなに珍しいことではありません。そのために運用に必要な知識や対応範囲が大きく広がります。
もちろん、バッチ処理や月次更新といった旧来システムの性能や記憶容量の関係で行っていた作業は減ります。オンラインヘルプなどもテキストから動画を使ったものを増やすことで問合せの量も減らすことが可能かもしれません。しかし、こちらも新たな知識が必要です。つまり、モダナイゼーションによって、新しい運用の仕組みづくりが求められるということです。
システムのモダナイゼーションによるこれからの波及的効果というか負担は意外と語られていません。利用者側のメリットが多くの事例集をにぎわしていますが、運用者側としてはなかなか大変です。
利用者側も新しい操作を覚えるだけでなく、モダナイゼーションによって生み出された新しい業務手順に従って業務を行っていく必要があります。例えばペーパーレス化により紙媒体で利用していた帳票が画面上になり、検索はしやすくなったかもしれませんが、画面で見るという新たな作業は生じます。以前なら分厚い台帳を開いて探していたことを考えると慣れれば負担感は大きく減るはずなのですが慣れるまでが一苦労ということです。
また、メニューをパーソナライズ(個人向けに変える)ことができるようになると不要なメニュー項目がなくなり、便利な反面、右下にあったとか、次ページの左上といった場所の感覚はリセットする必要があり、これもまた、長く既存システムに慣れ親しんだ人ほど慣れが必要です。
これもよくある話ですが、既存システムがキーボード主体に対して、新システムはマウスもしくは指タッチ、バーコードといった様々な入力装置が増えて、操作の慣れはもちろん、維持管理にも苦労することがあります。年配の方には乾燥傾向にある指でのタッチは認識しづらく、代替入力方法を用意する場合もあります。
しかし、これらは利用や運用のモダナイゼーションなのです。既存システムでは不明瞭だった操作マニュアル・運用マニュアル(動画含む)の整備やどういうところで初心者やIT不得手な人がつまづくかを利用者全員から集めることによるFAQ(よくある問い合わせと回答)ができます。これらの作成を支援するITツールもありますので積極的に作っていくことで、既存システムの問題点だった使い方がわからない、運用が特定の個人に依存するといったことが解消されるのです。
モダナイゼーションはシステムそのものだけでなく、利用・運用側にも波及することを意識して、仕組みづくりを行いましょう。