システム開発(開発予算)

 SLA契約も無事に済み、いよいよシステム開発に着手します。あとは突き進むだけ!・・ちょっと待ってください。開発予算の見直しはできていますか?

 「だって、契約はすんだから開発費はわかってるよ」「変更の予算も見てるから、ある程度の仕様変更も大丈夫」とおっしゃるでしょう。
 はい、システム開発の依頼分はOKです。では、依頼していない自社部分はどうですか。

 

まず、自社担当開発費。たとえば、当初より開発費が大きくなりそうなので、内製に変更した場合です。きちんとした計画に基づいた開発なら問題ありません が、大抵が担当者任せの見切り発車ではないでしょうか。あるいは、既存システムとの接続部や過去データの整理など、決して簡単ではない部分を開発費との兼 ね合いで自社で受けている例をよく耳にします。
 RFPでの業務手順の洗い出し、関連項目・対象データ特定がこの作業の成功へのポイントであり、RFPがない状態でこれをやるのは大変危険です。システム開発自体はうまく進んだにもかかわらず、データ移行や接続テストで失敗したというのは、ここに原因があります。

 次に、インフラ整備費。開発後のテスト環境や、システムを動かすのに必要なIT機器類、ソフトなども開発費から外れている場合が多いですね。これらは、 新たに導入する場合もありますが、既存機器の流用も考えられます。ただし、追加部品を検討する必要があるかもしれません。また、開発に伴う自社内のITイ ンフラは、他システムとの関連もあるため、全部導入とはいきません。整備費の算出を忘れないようにしましょう。
 特に、テスト環境と本番環境は開発上のポイントでもあります。テスト環境で社内ソフトを入れ忘れ、本番環境で動作不安定が見つかったなどという事態は、 全く困ったことです。こういった整備に関しては、大きな会社でも意外と漏れていることがあります。社内の標準環境とはどういうものか、きちんと把握する必 要があるでしょう。

 そして、導入教育費です。システム導入のための教育はどうでしょうか?予算がそれなりにあれば、開発会社に導入教育も依頼するでしょうが、実際は、担当者のみが対象で利用者全員への教育は社内でというケースが多いでしょう。当然、担当者の人件費、テキスト準備にかかる費用、集合教育ならば集合場所での費用なども必要です。
 システム利用による手順が従来業務手順と大きく違う場合は、この導入教育計画がシステム成功の鍵を握るといっていいでしょう。せっかく作ったシステムが無用の長物にならないよう、導入教育費は開発関連の費用と考えておくべきです。

 さて、上で述べた、自社担当開発費・インフラ整備費・導入教育費は、すべて開発費として考慮すべき初期費用でした。しかし、他にも考慮すべき費用があり ます。システムは初期費用だけでは動きません、ランニングコストと呼ばれる維持費も必要です。システム全体を見た場合には必ず検討すべき項目でもありま す。
 すなわち、保守費、ソフト修正費、消耗品費や機器の償却に伴うインフラ再整備費などです。決して少ない額ではないでしょう。システムの寿命を設定し、その間に必要な費用を算出しておくことは、中小規模システム開発においてあまり行われていないようです。「思ったより使えなかった」という結論が出ないよう、忘れず準備してください。

 最後に、以前 費用対効果のポイントで述べましたが、システム導入前に必ず導入前業務費用を出しておいてください。開発費用とは直接関係しませんが、導入後に評価するため必要 です。開発費用算出時にも、まだ出来ていない例をよく聞きます。RFPを作る際の業務フロー図に、時間と単価を割り当てれば基本的な費用がでます。あとは現行のシステムやITインフラ費用、そして電気代や通信費、消耗品費、スペースなど見落としがちなものも忘れずに算出しておきましょう。

 開発は、依頼したら終わりではなく、そこからが始まりです。ITで楽をするためにも、押さえるべきポイントを忘れないようにしましょう。