システム開発(ベンダー選び)

 前回に引き続き、システム開発に必要な知識をお話します。前回は、ITベンダーへの要求であるRFP(提案要求書)の作成までお話しました。今回は、ベンダーへの依頼と選び方についてです。

 「ベンダー?知らないよ」「どこに行けばわかるの?」という方も少なくないでしょう。
 

おすすめの探し方は、お近くの中小企業支援センターです。何らかの専門家を紹介してもらえます。また、インターネットタウンページで「ソフトウェア開発」「(自社の所在する)県」を記入、検索すると いくつかの企業が表示されますので、そこから選んで連絡をとってもよいでしょう。会社概要を知りたければ、ネットで社名と住所(市町村まで)を入力しま す。大抵の企業はホームページを開設していますから、参考にしてください。逆に、ホームページも開設していない・タウンページにも掲載していないような会 社は、よほどの掘り出し物でない限り期待薄です。

 もちろん、全国規模の大手ベンダー企業に連絡して もよいでしょう。概要を聞いたうえで開発可能と判断すれば、必ず来てくれます。RFPを用意していれば、充分な対応が出来ます。ただし、価格はそれなりに 上がりますから、予算が少なければ最初からそのことを伝えておき、無用なトラブルにならないようにしましょう。(予算が少ないなりに提案を変えてくる企業 もあります)

 さて、依頼するベンダー数は、最低2社、できれば3社?5社ぐらいがのぞましいところです。これ以上多いと選択が大変で、開発前に息切れしてしまいます。また、1社見積は絶対にやめましょう。 というのは、他社比較ができないと歯止めが利きませんので、その後の開発期間や金額にも大きく影響してくるのです。開発者の単価差による金額差はあるにせ よ、開発の流れや経費に大きな違いはないはず。そこを比較する資料をそろえるためにも、複数企業に依頼しましょう。比較することなく1社に決めて依頼した ため、途方もない金額や予定外
の工期を求められたケースがあとを絶ちません。中小企業の方の中には、比較するのが面倒であるとか付き合いだからというふうにおっしゃる方がありますが、手間を惜しんで余計なお金を払うのならば、システム開発する意味がないと言えます。業務改善、コストダウンを目指すという、開発の真の目的を忘れないようにし、急がば回れで最初の手間は惜しまないでください。

 では、本題のベンダー選びです。RFPを作成済みで、それを渡しているという前提でお話します。
 評価基準はいろいろありますが、注意点は3つです。
 まずは、RFPでの提案に対して、回答がどれだけきちんとしているか。RFPの内容をよく読まず、独自の見積や提案書を押し付けてくる会社は、間違いなく×です。システム開発内容も重要ですが、開発会社の関連システム開発経験や担当予定者のスキルなどは事前入手できませんから、ここでチェックします。経験があるとないとでは、こちらの負担もまったく違ってきます。操作性やデザインを重視する場合には、資料のみやすさなどもチェックポイントとします。また、専門用語の解説や図表など、こちらのITスキルを見越した資料作りであるかどうかは、開発時のやりとりに大きく影響します。つまり開発内容そのものだけでなく、表現や提案方法も重要なポイントだということです。

 二番目は、コストの中にはいろいろな意味が含まれていると いうことです。たとえば、関連システム開発の実績がないベンダーが、営業戦略として実績を得ようと、低価格で提示してくる場合もあります。見積が不得手な 企業では、大抵の場合において項目が落ちていて、後で変更を迫られるくケースが多いので、総額だけでなく各項目別に比較して不明な点は徹底的に確認しま しょう。システム開発の金額は、人件費に左右されます。小さな企業の場合、開発者一人が月当たり60万、いっぽう大きい企業ですと月120万ぐらい要求されます。
つまり、企業によって2倍以上の差が出てくることもありますから、ご注意ください。(人件費の差は、必ずしも人の能力の差でない場合もありますから、注意が必要です。)

 三番目は、こちらの提案以外の提案に ついてです。たとえば、RFPに自社開発希望とあっても、パッケージやカスタマイズ、アドインなどの部分開発によって、低価格もしくは高機能提案というの を行ってくれるベンダーもあります。もちろん、機能要件を満たさずただ自社製品を売りたいだけというのはお断りですが、注価格が低くなるにもかかわらず最適な提案をしてくれる会社が望ましいのです。システムの規模により、資料審査・プレゼ審査と、何段階かのふるいをかける場合もありますが、ほとんどは営業が資料を持参して説明してくれるケースでしょう。ここで重要になるのが、提案書をもってくる営業担当の、人柄や誠実度です。営業は会社の入口です。しっかり確認しましょう。

 上記の3つのポイントを意識して、自社に最適なベンダーを選んでいただきたいと思います。