今回も引き続き社内システムのモダナイゼーションについてお話しをします。
前回はモダナイゼーションの留意点の1つとして運用の留意点についてお話しをしましたが、今日はマスタ管理についてお話しします。
(6) 更新性の高いマスタ管理
マスタ管理というと「マスタ管理って運用の一部でしょ。システム担当に任せればいいんじゃないの」という答えが返ってくることがあります。
確かにバックアップやシステム更新に伴うマスタ管理は運用で行う内容ですが、マスタデータそのものの新規・修正・削除は業務と密接に関係しており、システム担当にとってはむしろアンタッチャブル(不可侵領域)なのです。
その点がうまく、業務担当と意識統一ができていないために「新しい商品情報がないから使えない」とか「古い部品情報が多すぎて使い勝手が悪い」とか「単価が更新されていないからいつも書き換えるのが大変」といった話が出てくるのです。情報は業務担当側にあり、システム担当は情報をもらえないと管理できないことの自覚がないことで起きる現象です。
もちろん、システム担当も全く問題ないこともありません。「マスタはシステムの要なので、誰にも触らせないぞ。設定は私しかできないからな」「一部だけ変更されてシステム全体が止まるのは絶対に避けたい」といって簡単にシステム担当以外が追加修正ができないようになっているケースがあります。これもまた必要なスキルや留意点を業務側に与えていない悪い例です。
マスタ管理は業務担当とシステム担当の協業なしにはできないものです。業務担当側が新しい商品、製品、部品、顧客情報を提供し、システム担当はそれに応じて必要なマスタに整合性を保ちながら、追加を行う。単価や名称等の内容が変わったら、それを反映させ、部品を含めて生産もしくは販売の対象から外れたら速やかに削除もしくは非表示にするといった連携が必要です。
当たり前のようなことが当たり前にできないことがモダナイゼーションしても続くことがよくあります。本当の課題がシステムの古さにあるのではなく、業務担当とシステム担当の情報共有にある場合、モダナイゼーションは有効に機能しません。
つまり、機能や端末をモダナイゼーションするだけでなく、マスタ管理を含む業務とシステムの連携もモダナイゼーションする必要があるのです。
基幹システムはその名の通り、業務の根幹の一部を形成するものとして、一体的に考えてください。具体的にはシステム担当も商品・製品に関する重要な会議には出席できるように業務基準を変更するとか、マスタ更新を月に1回の会議体として関係者を一堂に集めて、最新の状態(追加・修正・削除)を実施するといった業務の中に組み込むことを意識してください。それも実際の取引が始まる前に行うことが肝要です。どうしても「入力できない」「ムダな情報が邪魔をする」といったトラブルが起きてから後手後手で対応しがちですが、誰もいい思いはしません。先手先手で対応できるようにしていきましょう。
業務を分担する分業と前後の業務を意識する協業はセットです。これはマスタ管理にかかわらずすべての仕事に言えることだと思います。自分の仕事が他の人とどうつながっているのかを常に意識して、動くときっとみんなが楽しく仕事ができます。マスタ管理を通して実施してみてください。