システムの自社開発と聞いて何を連想されますか。中小企業では、おそらく「自社オリジナルの機能をシステム開発会社に依頼する」こととお考えでしょう。これが少し大きな会社になると、「自社のオリジナルの機能を自社システム部で開発する」となります。
最近、アウトソーシングとして、いろいろな会社機能を外部委託出来るようになりました。情報システム部、特に開発部門は、最初に外出しのターゲットになっています。しかし、真に強い競争力を持つ会社は、そうではなさそうです。自社の競争力を最大限に生かすためには、自社の業務を熟知している社内の人間が開発するのが最良とわかっているからです。
しかし、だからといって、全部のシステム開発を社内でやるのは愚の骨頂です。市販ソフトやわずかなカスタマイズで導入できるものは、優先的に使用すべきで しょう。この選択を見誤らないようにすることが重要です。自社の軸であり他社との差異化を図れる部分は、自社開発すべきです。
とはいうものの、中小企業では、情報システム部保有が困難です。兼任の担当者が、通常業務をこなしながら、企画立案、開発管理(開発は外部委託)、運用を行っているのが実情でしょう。そんなところに「自社内開発なんて」と言われそうですが、私が考えている自社内開発はもっと小さなものです。
例えば、経理ソフトでいくつかの集計表が出てきたとします。しかしその集計は、あなたのニーズにあったものではなかった。そのときどうしますか?
頻度の高いものならば、経理ソフトに新機能として組み込めないか考えることもありますね。また、パソコンが得手な若手やシステム担当者に、小さなシステム開発を依頼するかもしれません。もちろん、手作業で集計する(させる)場合もあるでしょう。
しかし、集計目的や内容を最も知っているのは、あなたなのです。あなたが少し勉強をして、エクセルのビボットテーブルの使い方・テキストファイルの取り 込み方を覚えれば、それですむ可能性が高いでしょう。つまり、経理ソフトからテキストファイルを出力しエクセルにテキストファイルを読み込んで、ビボット テーブルで任意の集計をするというシステムを開発するのです。これが私の勧める自社内開発です。システムというより、作業手順といったほうがいいかもしれませんね。
そもそも、システムとは日本語で「仕組み」を意味します。ソフトの機能を組み合わせ、特定の業務を効率よくこなすことは立派なシステム開発(しくみづくり)であると思うのです。
手順がかなり複雑で手間のかかるものなら、マクロ機能などの利用でかなり楽になります。こうなると少し敷居が高くなりますから、誰かに手伝ってもらうこ ともあるでしょう。しかし、先ほどのように眠っているソフトの機能を使うのであればそれほど難しくありませんし、意外に効率化効果は高いのです。
自社内開発を実現するためには、個々人のITリテラシー(ITを使いこなす力)を引き上げる社内教育が必須です。大半の人は、自分のパソコンの中にあるソフトの機能を使いこなせていません。それは、その機能が自分の業務に役立つと知らないからです。パソコン教育といっても、外部教育では概論的総論的な話題が中心ですから、なかなか身につきません。そこで学んだことを業務に生かせる人は、残念ながらごくわずかです。社内教育ならば、業務に密接し、かつ受講者の成熟度に応じた教育が可能です。
社内教育時のポイントは、テーマを小さめにするということです。例えば、「エクセルの勉強会」ではなく「エクセルの集計機能を使って小払い業務を楽にする勉強会」など、具体的な業務とリンクしたものにします。こうすることにより、初めてその機能が自分に役立つと実感できるのです。
こういった形の社内教育は、1回の時間を短くできます(30分から1時間)。ですから、ちょっとした空き時間を利用しての開催も可能です。テーマが小さ いので、習熟度も高いでしょう。私としては、この小さな勉強会こそが自社内開発の可能性を高めるポイントだと考えています。
これまで述べたような形の自社内開発は、自社外開発においても効果を発揮します。ソフトを使いこなすことにより、ソフトをよく理解でき、システム開発で無駄な機能をつけずに済むでしょう。頻度の低い機能はソフトの組合せでこなせるようになるためです。結果的に開発費が抑えられ、カスタマイズが不要にもなるのです。
自社内開発を実現するのには、時間がかかりますが、確実に企業の成長に貢献します。ぜひご検討ください。