今回も引き続き社内システムのモダナイゼーションについてお話しをします。
前回までにモダナイゼーションの手法を9つ紹介しました。手法自体の分け方や表現はいろいろあります。できるだけ網羅したつもりです。さて、今回はモダナイゼーションの選び方です。
まずはきっかけとなった原因とモダナイゼーションにかけれる期間・予算の確認です。
原因がメーカーの保守サポート切れであればその期間次第では、とりあえず「リホスト」を検討することになります。「リホスト」でも一般的な物理サーバー(新しいサーバー用コンピューター)への移行だけでなく、クラウドサーバーへの移行も視野に入れましょう。管理負担の軽減や支出を抑えることができる可能性があるからです。また、オフコンの場合でもクラウドへの移行ができる場合があります。オフコンの場合は新しい物理サーバーがないことも増えてきているので、期間によってはクラウドへの移行一択になることもあります。
メーカーの保守サポート切れまでの期間がそれなりにあったり、技術面での問題、中身のブラックボックス化の場合は予算での制約で検討していきます。予算が少なければ、前回の局所的なモダナイゼーション、多ければ、全体的なモダナイゼーションをベースに考えていきます。もちろん、期間に余裕があるならば、最初は局所的なモダナイゼーションを進めて、その後全体的なモダナイゼーションを行うといった段階的な現代化もあります。
特にリドキュメント・リラーンはブラックボックス化しているシステムを再構築する上では最初に行いたい作業です。リドキュメントで要件定義やシステム設計書を整理したり、リラーンで機能を把握し、業務手順を明確にしていくことは他のモダナイゼーションの基礎になります。そのため、これらのモダナイゼーションは準備的モダナイゼーションといわれることもあります。
次にシステムの業務範囲を業界共通もしくは一般的な定型業務と自社独自の業務に分けて検討します。なぜならば業界共通もしくは一般的な定型業務は市販ソフトやクラウドサービスで当初のシステムより優れた機能を提供している場合があるからです。
「システムを分けたら連携が困るのでは」と心配される方もいると思いますが、最近は他システムとのデータ連携が可能なソフトやサービスが増えてきているので前のようにシステム全体を一体的に開発しなくても問題ありません。もちろん、事前に必要なデータ連携が可能かどうかを確認してソフト、サービスを導入してください。
業務範囲を分けることでデータやシステムの機能範囲も小さくなり、検討もしやすくなりますし、モダナイゼーションの手法もそれぞれの範囲で別の手法を選ぶことができるのでより効果的な現代化を図ることができます。
できれば、業界共通もしくは一般的な定型業務については業務手順や業務分掌(各担当の役割分担)も見直すことをお勧めしています。いわゆる業務の標準化です。市販ソフトやクラウドサービスに完全に寄り添う必要はありませんが、参考にできることはできるだけ参考にしてこれを機会に業務を合わせると今後のIT資産の維持管理も容易になるだけでなく、業務改善にも寄与します。
もちろん、自社のコアコンピタンス(企業の中心となる強み、存在価値)に係る部分はカスタマイズや開発してでも自社独自の部分をもつことは賛成です。しかし、インターネットを介してこれだけつながる世界になっている中でその部分はできるだけ絞り込んでいくことも検討してください。
そのために、市販ソフトの体験版やクラウドサービスのお試しプランを利用して、世の中的にいまどのような流れや役割を前提としてシステムが使われているのかを把握しておくことをお勧めしています。ソフト・サービスによっては得手不得手があり、自社の業務との相性もあるからです。
また、IT関連の展示会にいくことも自社のシステム関連業務の棚卸に役立ちます。なかなかITが不得手な人にはハードルが高いですが、業種・業務をしぼったものかもしくは小規模なものならば比較的とっつきやすいと思います。