業務改善の育て方(その5)

 さて、「業務改善の育て方」も5回目になりました。今回は、業務改善をサポートする周辺環境、つまりオフィス環境の改善がテーマです。

 前回、席替えの効果について述べましたが、座るところが変わるだけでは効果のほども半減です。席替えする以上、いろいろ見直しをしてからでなくてはいけません。

 それは、オフィスの2S(整理整頓)です。

・整理
 いるものといらないものを分けて、いらないものを捨てること
・整頓
 誰もがわかりやすく使いやすいようにきちんと置くこと

「そんなのうちでもやってるよ」という方が大半でしょうが、現場や工場に比べると事務所は「えぇ?!これで整理整頓?」といった状態だったりします。特に来客に関係ない場所など、目も当てられない状況のところもあります。
 また、収納棚や両袖机など大容量収納のおかげで見た目はきれいですが、中は混沌とした状態などということも少なくありません。

 整理整頓ができているオフィスでは、個人の引き出しは片袖で十分ですし、大半の資料は透明扉か扉なしの棚に整然と収納されています。自社オフィスでを全部取り除いた状態を想像してみましょう。誰に見られても恥ずかしくないだけでなく、誰でもどこに何があるか分かる状態になっているでしょうか?

 現状を把握するには、この扉をすべてとってみるという方法以外にも、盆休みや年末年始などの長期休暇中にオフィスの写真を撮るのもおすすめです。長期休暇なら、とりあえず仕事に区切りをつけているはず。にもかかわらず、机に書類が山積していたり、収納がバラバラな状態だったりするとアウトです。とて
も「整理整頓」ができているとはいえません。

 では、整理整頓はどういう風にすればよいでしょうか。まずは、年度末、年末の大掃除ぐらいはしっかりしましょう。次は盆休みも含めた長期休暇です。その次は週末単位でできるようにし、最後は、毎日の終業時には机上にものひとつ置いていない状態であるというように、段階を踏んでいきます。

 整理整頓には写真が有効です。写真を見れば一目瞭然、言い訳無用です。ある会社では週末に管理職が抜き打ちで出社し、写真をとったのち机上のものをすべて捨てるという大技で整理整頓を徹底しました。捨てるまではいかなくても、一時保管として片付けてしまい、何らかのペナルティなしでは戻せないようにするぐらいはやってもよさそうです。

 私物を減らす(もしくは共有書類の抱え込みを防止する)には、両袖を片袖とし、引き出しを半分にして書類を置けなくする方法もあります。そうすれば、自 然と各所の書類棚へ片付けるようになるわけです。もちろん、どの書類棚にどの書類を納めるかが明確でないと、かえって書類棚が煩雑になり逆効果ですから、 準備が必要です。
 フリーアドレスといって、座る場所を固定せず私物引き出しもなしという手法がありますが、ハードルが高すぎて導入は難しそうです。
 そのかわり、打合せ場所の改善として、オープンな会議スペース作りをお勧めします。会議スペース近くの人は、会話内容が聞こえて仕事に集中できないという意見もありそうですが、まわりに聞こえると自覚することで無駄話は減りますし、だらだらとすることもないでしょう。こういったオフィス環境が、業務によい刺激をあたえることになるのです。

 ISO取得会社なら当たり前のことですが、書類の保管期限も重要です。要は捨てる時期を必ず決め、捨てることを当たり前にするのです。経理書類が7年から10年、労働安全書類が3年から5年など、法的に決まっている書類を除いては、3年以上保管する価値のあるものは少ないはずです。特に電子化されたあとの紙データは無用の長物。1年以上前のものは整理箱に入れて倉庫にいれ、3年経って一度も開封しなかったものは開封せずそのまま破棄する等、書類の寿命をきちんと決め、社員全員に守らせるのも重要です。

 このようにして書類や机の整理をすることが業務の整理につながり、業務改善を育てる環境づくりともなります。席替えはそのきっかけをつくるよい機会です。毎年とはいいませんが、3年に一度ぐらいは席替えをして、オフィスの棚卸しをすることをお勧めします。