業務改善の育て方(その3)

 前回、業務改善を進めるにあたっては、以下の3つを念頭においての意識改革が必要であるとお話しました。

1.参加意識をもたせる(明日は我が身)
2.お客様への意識をもつ(業務はみんなつながっている)
3.コミュニケーションを増やす(世界はひとつ)

 意識改革を進めながら次に行うべきは、期限改革です。何事にも期限を切る。それも大きな期限でなく、小さく期限を切って相手や周りに周知徹底します。これが業務改善を育てるにあたって必要であり、当たり前のことですが、できていない企業がとても多いのです。

キーワードは

 ワンデーレスポンス  です。

 直訳すると「1日応答」ですが、要は、質問や依頼に対する回答をその日のうちに必ず行うというものです。「そんなのできるわけないじゃないか。関係者との調整とかあると、すぐ数日たつよ」とツッコミを入れられそうですが、いつまでに回答予定であるという日時指定をその日のうちに返答することでもよく、これもワンデーレスポンスということになります。大切なのは期限を切って行動を起こことなのです。

 このワンデーレスポンスは、建設業における多くの協議で返答が遅いために待機ロスや段取り遅れが生じ、それがコストアップにつながっている実態を踏まえて、できるだけ早く返答しようというのが始まりです。
   「受注者である建設会社からの問い合わせに、発注者の監督員が24時間以内に必ず返答する」という方針で、国交省の北海道開発局からはじまりました。北海道は冬期に工事が出来ませんので、返答時期によっては工事の一部が年度明けになってしまいます。回答が早くなることで、年度内に工事が収まるなどかなりのコストダウンにつながりました。現在、国交省では、全国にワンデーレスポンスの展開を行っており、一部の公共地方団体でも取り組みが始まっています。しかし、まだまだ浸透していないのが実情です。

 一般企業においても、関係者の調整が不透明なためつい返事を遅らせたり、通常業務を優先して返答期日をあいまいにするケースが多く見られます。このような状態が業務改善の弊害となることは、いうまでもありません。ワンデーレスポンスを実践している企業での業務改善は、成功率が高くなるのです。

 とはいえ、ワンデーレスポンスの実践は、先行事例をみてもなかなか難しいようです。一番の問題は、実践する企業や団体以外の関係者への問い合わせが必要なものです。また、「うちじゃ関係者が多くてワンデーなんてとても無理」という方もおありかもしれません。段階的に導入することをお勧めします。

 まずは、対象業務を社内業務に絞込み、関係者が少ない部署からはじめるよう範囲を限定したり、ワンデーにこだわらず返答期日を必ず回答するなど簡単にできそうなことからはじめる。それに慣れたら徐々に業務範囲を広げたり、期日を縮めていくという手法ならば導入しやすいはずです。
 対象業務の範囲を広げるタイミングや期日短縮のルールは事前に決めておき、目標設定とスケジュール管理も必須です。ワンデーレスポンスの普及活動そのものが、だらだら期日なしになっていたらそれこそ本末転倒です。また、出来ないといった問題が出てきたら、期日を決めて修正していく。このようにして、
企業内に浸透させていきましょう。

 ワンデーレスポンスの効果を把握するには、現状どれくらいで返答が帰ってきているかを調べておくのも有効です。効果が金額の形でわかるからです。業務改善では、業務フローだけを作ってしまいがちですが、ワンデーレスポンスのように時間軸を入れて考えることが、改善効果をあげる重要なポイントとなるのです。