前回は、返事に期限を設けるワンデーレスポンスの話をしました。もちろん、メールやグループウェアなどITツールを使うと効果的なのはいうまでもありません。
今回は、業務改善の最大の敵である抵抗勢力についてお話したいと思います。一口に抵抗勢力といっても、いろいろな方がいらっしゃいます。よくある3つのタイプを考えてみます。
1.業務改善で慣れた手順がなくなる
2.業務改善で自分の地位や権限がなくなる
3.業務改善で自分の仕事がなくなる
では、順に傾向と対策を見ていきましょう。
1.タイプの多くは、業務改善の総論には賛成なのに、各論つまり自分の仕事
に関わってくると、とたんに反対を言い出す人たちです。
こういう場合、理想を言えば、その人の業務自体を変えてしまうことが一番手っ取り早いのです。業務が変われば、そもそも慣れた仕事などありません。改善された業務手順のほうが覚えやすかったり楽だったりすれば、当然そちらを学んでいくはずです。業務改善が2つあれば、その作業同士で担当者を入れ替えてもいいでしょう。もちろん、諸事情で業務を交代しにくい場合もありますが、部署名を変更する・席替えをするなど、業務だけでなく会社が変わるんだという意識をもたせる工夫を考えます。席替えは会社ではあまり行われないようですが、オフィス環境を変え、書類の所在を確認したり、引き出しの数を減らして無駄な書類を処分することは、業務改善の大きな力となります。業務改善がうまくいかないという会社は、席替えやオフィス環境の見直しをお勧めします。期末の大掃除も、意外と効果があります。オフィス環境の話はまた別の機
会にします。
2.タイプは、権限委譲やチェック体制の簡素化などがきっかけで発生します。そもそも不要なはんこだったり、実態を伴っていなかったりするものは、業務改善の格好の対象です。しかし、そのはんこを生きがいにしている人たちがしがみついている場合が少なくありません。
この場合、教科書的には、その職位のあるべき姿をしっかり考えさせるような管理職講習などを外部講師を使って行うのですが、改善対象の業務だけ一時的に降格してもらい、管理職みずから行ってもらうことにしてはどうでしょうか。自ら作業を行い、その作業にもともとの自分の役割が本当に必要なのか、部下の目線で確認してもらうのがよいと思います。降格した人の代わりに承認する人を補充できないときは、更なる上位者がその部分だけ代行するようにしましょう。降格というと抵抗を招きそうですが、期間を限定し、改善の一環として業務体験を行うという流れを組み込めばよいのです。
3.タイプは、業務そのものがなくなったり、IT化、機械化による自動化で起こります。
対象者が忙しい人である場合は、歓迎こそすれ反対はありません。しかし、余裕がある(平たく言うとヒマな)人にとっては、自身の会社生命を左右されることですから、最強の抵抗勢力になるのは間違いありません。
この場合に重要なのは、何のために業務改善するのかを最初にきちんと定義しておくということです。経費削減のような、コストダウン要因だけだと、残念ながら本人の仕事を減らす=極端な話やめてもらうこともやむを得ません。しかし、競争力アップなど収益改善の一環であれば話は違います。なくなった業務の分、新たな業務を担当すればよいのです。ただし、このとき、時間があいたからこれをやってもらおうではいけません。この業務をやってもらうためにあなたの不要な業務をなくすのですといった宣言が、先行して必要です。
だからこそ、最初にお話ししたように「なぜ改善をするのか」説明し、会社全体で認識しておくことが大切なのです。少なくとも業務改善は部分的な改善ではなく、会社を変える最初の一歩であると、自トップを含めた経営陣が統一見解をもち、自ら実践することが成功の秘訣です。
抵抗勢力の言葉は、ともすればわがままに聞こえがちですが、改善のヒントも隠れています。きちんと耳を傾けることも忘れないでください。